このサイトは、東京のある弁護士が、主に中小企業を念頭において事業再生に関する法律や税務をサイトの形にして公開しているものです。このサイトだけでわかる!を目標に、さらに、内容を充実させていきたいと考えています。不十分な点や、さらに追記をしたほういいような点がございましたら、お問い合わせ先からご指摘を頂けると助かります。

また、別サイトになりますが、労務、事業承継、M&A、取引関係法務(債権管理など)や、株式会社の機関運営・取締役の責任や株主対策も同様のコンセプトのサイトを作成していますので、そのリンク先も紹介しています。

以下は、民事再生手続及び会社更生手続をあわせて、「法的手続といいます。
また、私的整理とは、事業再生ADRなどの、法的手続によらない、債務の整理等をいいます。
なお、主に中小企業を念頭に説明をしていますので、上場関係の規制には触れていません

以下、できるだけ整理してご説明をしていますが、やや専門的な内容になっています。
そこで、会社経営者の方が知っておきたい事業再生の基礎知識をまとめたページを準備しました。こちらを見れば、細かいことはともかくとして、ざっと理解できるということを目指しています。

1 事業再生を検討にあたっての基本的事項

⑴ はじめに(事業再生の全体像)

事業再生は、BSの改善PLの改善に分けて考えることができます。いずれも、まず己を知るところ(現状把握)からスタートします。

BSの改善は、まず資金繰の把握が重要です。資金繰を把握することが、BS改善における己を知るです。比較的中小企業では、資金繰の管理ができておらず、場当たり的に金融支援の要請をしていることありますが、これでは金融機関の信用を得ることはできません。
資金繰を把握をしたうえで、資金繰を維持するうえで必要な金融支援(リスケや債権カット)を金融機関に要請することになります(BSの改善

次にPLの改善、事業を見直しからスタートします。特に損益分岐点分析は有用です。これが、PL改善における己を知るです。
そして、将来に向けての事業計画経営改善計画)を作成することになります(PLの改善)。仮にスポンサーが付けば、スポンサーによる支援(販売支援など)により改善することもありえます。

資金繰の把握事業計画の作成は、事業再生でどの手続を選択するか関係なく、必要なものとなります。なお、資金繰管理事業計画は、事業再生局面では必須ですが、平時でも重要(有益)なものです。

⑵ 専門家に相談するにあたって持参すべき資料

なお、専門家に相談に行く際には以下の資料を持参するといいと思います。現状を把握するには有益です。

資料資料が有益な理由
過去3期分~5期分の確定申告書(添付資料も含めて全て)申告書の添付資料の財務諸表から、損益状況と資産負債状況がわかるので、定量面での現状把握ができます。
特に3期~5期を時系列に並べると、会社の財務上の変動がわかり、会社の問題点を把握するのに有益です。 さらに、申告書には、売掛金一覧、受取手形一覧、買掛金一覧、支払手形一覧などが添付されており、仕入先(債権者)、得意先の概要がわかるので、事業の状況を把握することが可能です。
会社案内その他商流のわかる資料会社の内容や、商流、特殊な業界であれば業界の特質等を確認し、定性面での会社の状況把握に有益です。
その他に右記のことがわかる資料直近の試算表(直近の財務状況などが把握できるもの)
・銀行取引の状況がわかる資料
・担保設定の状況がわかる資料
・租税や給料等の支払状況(滞納の有無などが把握できるもの)
・会社組織図(会社の人的状況が把握できるもの)

⑶ 資金繰表の作成及び 暫定的な当面の資金繰破綻の回避策

⑴で述べたように資金繰の状況を把握(資金繰表の作成)することが、事業再生のスタートです。資金繰り表は、まず簡単な月次(毎月の入金と出金を入れていくもの)で作成したうえで、可能であれば日繰り(毎日の入金と出金を入れていくもの)で作成するのが安全です。それほど難しいものではありません。

月次の資金繰り表のサンプルとして中小企業庁の以下のリンク先をご参照下さい。

また、会計士協会近畿会のホームページにもサンプルがありますのでご紹介します(民事再生を前提としていますが、通常の資金繰り表として使用可能です)。
(以下はトップページです。「資料ダウンロード」→左のサイドバーから「経営委員会資料」にございます。)

資金繰が確認できたら、次は資金繰破綻を回避する方策を検討しなければなりません。事業計画を作成するもの、それを前提に金融機関等と交渉するのも一定の時間を要します。暫定的な資金繰破綻を回避する方策としては、以下のリンク先のものが考えられます。

⑷ 財務分析及び、事業計画(経営改善計画)の作成 その方法

⑴で述べたように事業再生において、事業計画経営改善計画)はスキームを問わず非常に重要です。事業計画は、まず財務分析を通じた自己分析からスタートして、将来の事業計画を作成します。
事業計画は、会社ごとに、状況ごとに異なりますので、一般論として申し上げられることは限定されますこと、ご了承ください。事業計画の前提となる財務分析(損益分岐点分析など)及び、それを踏まえた事業計画作成の基本的な考え方について、以下のリンク先をご参照ください。

 スポンサー募集(選定)方法

事業再生において、スポンサーは非常に重要です。スポンサーは、⑴のとおり、基本的にはPLの改善に効果的ですが、事案によってはスポンサーが資金支援をすることもあり、この場合は、BSの改善(資金繰りの改善)にも効果があります。スポンサー選定に決まった方法はありませんが、概要まとめると以下のリンク先のとおりです。

⑹ 資金繰りが厳しく金融支援が不可避な状況における対応
 (=再建のためには、リスケ又は債権カットが不可避の場合の対応)

資金繰が厳しい場合の再建は、金融債務のリスケジュールや金融債務カットを前提とした再建方法を検討する必要があります。その場合、そもそも再建が可能なのかどうか、再建が可能であるとしてどのような方法があるか(私的整理か法的整理か)などを検討する必要があります。検討すべき事項などについて、以下のリンク先をご参照ください。

⑺ 人件費削減策について

事業再生において、ほとんどの場合に人件費削減策リストラなど)が検討されます。これは人件費が固定費の中の主要な費用となっているためです。しかしながら、我が国の法制上、人件費削減は容易ではありません。弁護士とも相談のうえ、慎重に進める必要があります。

労働関係の基本的な規律と、主な人件費削減策について以下のリンク先にまとめました。


⑻ 会社債務を連帯保証している代表者個人の対応について

中小企業だと代表者個人が会社の金融債務を連帯保証しているケースが多いです。この場合、会社について以下の2や3で述べる私的整理や法的整理を行った場合、経営者についても何らかの対応が必要になります。近時は経営者保証に関するガイドラインも利用されています。以下のリンク先に、経営者個人の連帯保証債務の対応についてまとめましたので、ご参照下さい。

⑼ 経営不振の場合の取締役の第三者責任について

会社が倒産状態(財務状況悪化)の場合、経営者(取締役)は、無理に返済見込みのない借入や商品仕入を行うことがあり、このことが後から取締役の第三者責任として問題となることがありますので注意が必要です。取締役の第三者責任については、管理人が運営する別サイトの以下のリンク先をご参照下さい。

⑽ 経営不振の子会社等の再生について

時々、経営不振の子会社等の再生方法が問題となることがあります。経営不振ですので、倒産処理(破産等)をすればということですが、親会社の責任として、簡単には倒産させられないということもよくあります。また子会社株式の譲渡ないしは、子会社の事業の事業譲渡をすることも考えられますが、その場合、親会社に相応の負担を求められることがあります。その場合、問題になるのが親会社の負担にかかる税務上の扱いです。端的には寄附金認定をされないかということです。以下のリンク先をご参照下さい。

2 私的整理による再建方法

私的整理による再建方法とは、限られた債権者(多くの場合、金融債権者)のみを対象にしてリスケや債権カットを行うことにより、債務負担を減少させる方法を指します。取引債権者を巻き込みませんので、事業棄損が少なく、結果として、金融債権者も債務者が法的手続をとる場合よりも回収が増えることが多いと言われています。

私的整理による再建方法は、やり方として大きく法人格を維持したまま行う方法と、第2会社方式による方法があります。
法人格を維持したまま行う方法とは、法人格を維持しつつ、金融債務のリスケや債権カットを行うものです。
第2会社方式は、事業を別会社に移転させ、金融債務のみを整理するもので、債権カットを前提とする方法です。

また、私的整理手続の種類としては、制度化された私的整理準則型私的整理とも呼ばれます)が準備されています。進め方は、いずれの手続でもほぼ同じで、企業規模や債権者の属性などに応じて手続を選択します。

私的整理による再建方法については以下のリンク先に整理しましたので、ご参照下さい。

3 法的手続による再建方法

法的手続による再建方法としては、民事再生手続と会社更生手続があります。あまり大きな違いはありませんが、担保権を取込むかどうか、管財人選任を原則とするか否か、平均的に手続にかかる期間などが異なります。担保権を手続に取込むべき必要性が高い事案でなければ、会社更生手続でなく民事再生手続が選択されるのが一般的です。会社更生手続についても、おって追加予定です。

民事再生手続の流れについては、以下のリンク先をご参照ください。会社更生手続は、おって追加予定です。会社更生手続も、民事再生と大きくは異なりません。なお以下のリンク先は、概要を確認頂く趣旨で、詳細を載せておりません。

上記リンク先で手続の全体像をご確認頂いたことを前提として(手続について概要把握されていることを前提として)、手続上の論点や、実体法上の論点などを、以下のリンク先にまとめましたある程度手続を把握されている場合は、上記リンク先より、以下のリンク先のほうがわかりやすいと思います。

4 会社の組織運営に関する法務、M&A、取引関係法律等のリンク先

会社の組織運営に関する法律M&A、取引関係の法律(債権管理や取引先が破産等した場合の対応など)、相続に関するお悩みについては、それぞれ別のサイトを準備しています。それらのお悩みについては、以下の各リンク先をご参照ください。

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