このページでは雇用をとりまく法律や規則(まとめ)について、説明をしています。

雇用(労働法)関係の法律は、労働者保護の観点や、集団的規律を及ぼす必要などから、個別の労働(雇用)契約以外に、就業規則、労働協約などが労働条件を画しています。また、労働(雇用)契約は、労働者保護の観点から、労働基準法などで契約自由の原則に制限がかけられています。

1 主な雇用関係の法律(まとめ)

雇用関係をとりまく主な法規範をまとめると、概要の次のとおりになります。

労働基準法労働条件の最低基準等を定める(同法1条)
労働契約法労働契約に関する基本事項を定める(同法1条)

上記の各契約を確認するまでもなく、雇用関係の基本的なルールは、就業規則に集約されています。ただ、市販の就業規則をそのまま使っているような会社ですと、雇用契約の内容なども重要になってきます。普段はあまり意識しないかもしれませんが、就業規則をきちんと作成しておくこと、従業員に周知しておくことは、とても重要です。

2 法規範の個別検討

⑴ 労働協約とは?

労働協約とは労働組合と使用者(企業)との間で、労働条件その他に関し協定したものです(労組法14条)。

労働協約には以下の効力が認められます。
就業規則に優越する効力が認められます(労基法92条)。
・労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約は無効となります(労組法16条)。
・一の工場事業場に常時使用される同種の労働者の四分の三以上の数の労働者が一の労働協約の適用を受けるに至つたときは、当該工場事業場に使用される他の同種の労働者に関しても、当該労働協約が適用されます(労組法17条)。

⑵ 就業規則とは?

就業規則とは職場規律や労働条件などに関する規則集です(労基法89条参照)。

就業規則には主に以下の効力が認められます。
・使用者が、合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させている場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によります(労働契約に異なる定めがある部分を除く)(労契法7条)。
・就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効となり、無効となった部分は、就業規則で定める基準によります(労契法12条)。

大阪高判H28.10.26 社内報に賃金改定(賃金減額)の案内がされていたことをもって、就業規則の変更があたっとすることはできないとした裁判例

裁判例を確認する
「控訴人が就業規則の変更とみるべきと主張する社内報には、賃金改定の内容や説明が記載されているものの、これが就業規則の変更となる旨の説明はない上、交渉結果の報告等を交えたものとなっていることからすると、就業規則の体裁としても整っていないものというほかない。よって、補正して引用した原判決認定のとおり、上記社内報は、協定内容等の説明文書の域を超えるものとはいえないと認定するのが相当である。」

⑶ 雇用契約とは?

雇用契約(労働契約)とは、従業員と使用者との個々の合意によって成立する個別の契約です(民法623条、労契法6条)

雇用契約には、主に以下の効力が認められます。
・当事者(労働者及び雇用主)双方の同意が無ければ変更はできません(労契法8条)。
・解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効となります(労契法16条)。