このページでは暫定的な資金繰破綻を回避する方策について、説明をしています。

ここで検討しているものは、あくまでも暫定的なものです。事業を立直して事業収益を確保することが本筋ですが、それには時間がかかります。立直し前に資金繰りが破綻しないために考えられる方策となります。

1 支出の抑制

⑴ 経費の削減

支出の抑制としては、販管費(経費)を削減することが考えられます。しかし事業を継続していくためには一定の経費がかかることは、やむを得ません。必要な経費まで削減すると、結局事業が毀損してしまいます。経費を見直し、無駄な経費を見つけ出し削減することになります。
比較的大きな項目は、通常、人件費と賃料になります。いずれもすぐに削減できる性質のものではありませんので、いずれも、無理せず、長期的な対策(人員削減や移転など)を検討すべきと言えます。

⑵ 税金や社会保険料の猶予制度の活用(もしあれば)

税金や社会保険料などについて、支払猶予制度があれば、利用することを検討します。

⑶ 人件費等の見直し

役員給与や、従業員の賃金を一時的に見直すことを検討します。広い意味での人件費削減の検討になります。

役員給与の減額をする場合は、税務上の観点からも(臨時)株主総会決議を経ておくべきです。

従業員にかかる人件費削減策は、以下のリンク先をご参照下さい。

【作成中】

2 資金調達

⑴ 資産処分による資金調達

仮に処分しても事業に支障のな資産を有しているのであれば、資産を処分して資金を調達することが考えられます。
また、協力者がいる場合は、事業に必要な資産を協力者に売却して当該賃貸を協力者から借りるという方法も考えられます(リースバック)。ただし、この方法は、協力者の協力が得られなくなった段階で事業継続が困難になるリスクがありますので、慎重に検討する必要があります。

⑵ 補助金・助成金・給付金などの利用

補助金、助成金、給付金については、以下のリンク先をご参照下さい。なお給付金は、各市区町村で設定されており周知されていないケースもあるので、各市区町村のホームページなどでご確認下さい。対象があれば申請をするということになろうかと思われます。

⑶ 金融機関からの調達

民間金融機関からの調達は既に難しい状況になっている可能性がありますが、政府系金融機関(日本政策金融公庫や商工組合中央金庫)から融資を受けられる可能性があります。また、民間金融機関でも信用保証協会付き融資であれば調達できる可能性があります。

なお、社債については利息制限法の適用はありません(最判R3.1.26)。社債利息が利息制限法を超過していたとしても、それだけでは不当利得返還請求はできませんので、注意が必要です。

最判R3.1.26 社債の発行の目的、募集事項の内容、その決定の経緯等に照らし、当該社債の発行が利息制限法の規制を潜脱することを企図して行われたものと認められるなどの特段の事情がある場合を除き、社債には同法1条の規定は適用されないとした判例

裁判例の詳細を見る
破産者甲社の破産管財人Xが、破産者が発行した社債について社債権者であるYに利息制限法1条所定の制限を超えて利息として支払った金額を元本に充当すると過払金が発生しているなどと主張して、Yに対し、不当利得返還請求権に基づき、過払金の返還等を求めたのが本件です。1審、控訴審ともXの請求を認めず、Xが上告受理申立をしましたが、本判決は以下のように説示して、Xの請求を認めませんでした。
「利息制限法1条は、『金銭を目的とする消費貸借』における利息の制限について規定しているところ、社債は、会社法の規定により会社が行う割当てにより発生する当該会社を債務者とする金銭債権であり(同法2条23号)、社債権者が社債の発行会社に一定の額の金銭を払い込むと償還日に当該会社から一定の額の金銭の償還を受けることができ、利息について定めることもできるなどの点においては、一般の金銭消費貸借における貸金債権と類似する。
  しかし、社債は、会社が募集事項を定め、会社法679条所定の場合を除き、原則として引受けの申込みをしようとする者に対してこれを通知し(同法677条1項)、申込みをした者の中から割当てを受ける者等を定めることにより成立するものである(同法677条2項、3項、678条、680条1号)。このように社債の成立までの手続は法定されている上、会社が定める募集事項の「払込金額」と「募集社債の金額」とが一致する必要はなく、償還されるべき社債の金額が払込金額を下回る定めをすることも許されると解される(同法676条2号、9号参照)などの点において、社債と一般の金銭消費貸借における貸金債権との間には相違がある。また、社債は、同法のみならず、金融商品取引法2条1項に規定する有価証券として同法の規制に服することにより、その公正な発行等を図るための措置が講じられている。
  ところで、利息は本来当事者間の契約によって自由に定められるべきものであるが、利息制限法は、主として経済的弱者である債務者の窮迫に乗じて不当な高利の貸付けが行われることを防止する趣旨から、利息の契約を制限したものと解される。社債については、発行会社が、事業資金を調達するため、必要とする資金の規模やその信用力等を勘案し、自らの経営判断として、募集事項を定め、引受けの申込みをしようとする者を募集することが想定されているのであるから、上記のような同法の趣旨が直ちに当てはまるものではない。今日、様々な商品設計の下に多種多様な社債が発行され、会社の資金調達に重要な役割を果たしていることに鑑みると、このような社債の利息を同法1条によって制限することは、かえって会社法が会社の円滑な資金調達手段として社債制度を設けた趣旨に反することとなる。
  もっとも、債権者が会社に金銭を貸し付けるに際し、社債の発行に仮託して、不当に高利を得る目的で当該会社に働きかけて社債を発行させるなど、社債の発行の目的、募集事項の内容、その決定の経緯等に照らし、当該社債の発行が利息制限法の規制を潜脱することを企図して行われたものと認められるなどの特段の事情がある場合には、このような社債制度の利用の仕方は会社法が予定しているものではないというべきであり、むしろ、上記で述べたとおりの利息制限法の趣旨が妥当する。
  そうすると、上記特段の事情がある場合を除き、社債には利息制限法1条の規定は適用されないと解するのが相当である。
  前記事実関係によれば、本件において上記特段の事情の存在はうかがわれないので、本件社債に利息制限法1条の規定は適用されないというべきである。したがって、Xの請求は理由がない。」

⑷ 第三者割当増資による資金調達

出資者がいれば、第三者割当増資による資金調達が考えられます。但し、出資は会社の支配権に影響しますので、留意が必要です。

⑸ 留意点

資金繰りが厳しくても、友人や親戚等から資金調達することは慎重な判断が必要です。
また、闇金などから資金調達することは避けるべきです。
いずれも、事業再生を難しくします。それらの手段を取らざるを得ないということは、法的手続等を検討すべき段階にあるとご認識頂いたほうがいいかと考えます。