このページでは、民事再生手続の全体像(流れ)についてまとめています。なお、法人の民事再生手続を前提として記載しています。
以下で触れていない、民事再生手続に関する論点については、別のページに、各論点ごとにリンクを貼る形でご紹介をしています。再生手続について詳しく知りたい方は、以下のリンク先もご参照下さい。なお条文は、法律名の明示がないものは民事再生法です。

1 民事再生手続きの流れ

一般的な民事再生手続の流れは以下のとおりです(条文は民事再生法です)。⑴で全体像を確認したうえで、⑵以下で個別にご説明を加えています。

⑴ 民事再生手続きの流れ(全体像 東京地裁の場合です)

         時系列  申立日からの日数   対応すべき事項
事前準備→申立申立書の作成等
債権者説明会3日~1週間 
開始決定・第1回打ち合わせ1週間債権届出書の送付
債権届出期限1週間+1ヶ月 
  債権認否書作成
計画案ドラフト作成
財産評定作成
125条報告書作成
財産評定・125条報告書提出期限
・計画案ドラフト提出・第2回打ち合わせ
2ヶ月 
債権認否書提出期限2ヶ月+1週間 
一般調査期間10週~11週 
  再生計画案の作成
計画案提出期限・第3回打ち合わせ3ヶ月 
計画案付議決定・債権者集会招集決定3ヶ月+1週間
債権者説明会/賛成依頼
書面投票期限集会の8日前
債権者集会における計画案の決議→認可決定5ヶ月 

⑵ 再建案の検討など、事前準備

主な事前準備(検討事項)は以下のとおりです。

手続選択の検討(債権カットの要否、法的手続の要否の検討、再建可能性の検討など)。手続選択のポイントは以下のリンク先をご参照下さい。

・会社債務について連帯保証人がいる場合、連帯保証人の処理方針の検討

⑶ 申立準備

・弁護士への具体的な相談(申立代理人の選定)

申立書の作成/申立費用の確保

・申立後の事業継続のための準備

・スポンサー候補がいる場合はプレパッケージ型の処理を検討

再生手続申立の準備については、以下のリンク先に詳しくまとめております。ご参照下さい。

⑷ 再生手続申立(21条)から開始決定まで

通常、弁済禁止の保全処分を得ます(30条1項)。さらに中止命令・包括禁止命令を得ることもあります。

従業員説明会/債権者説明会/プレスリリースなど

・申立後に発生した債権の共益債権化120条

民事再生手続開始申立から開始決定までの諸論点については、以下にまとめましたので、ご参照下さい。

また、監督委員が選任されることが一般的です(54条)。まれに管理命令が発令されることもあります。それぞれ以下にまとめましたので、ご参照下さい。

⑸ 再生手続開始決定33条

裁判所から、再生手続開始決定が発令されます。
再生手続開始決定には、一般的に以下の内容が記載されます(34条ほか)。
・再生債権届出期間、債権認否書提出期限、調査期間
・財産評定・125条報告・再生計画案の各提出期限
・裁判所の許可事項(41条
・月次報告が指示されることが多い→月次報告については、以下のリンク先をご参照下さい。

再生手続開始決定により、再生債権は弁済禁止とまります(85条1項)。なお、申立時の保全処分は失効します(30条1項)。

再生手続開始決定により、強制執行手続等は中止されます。(39条
 
再生債権に関する訴訟は中断します(40条1項

⑹ スポンサーの選定作業

民事再生開始決定後にスポンサーを選定する場合は、開始後すみやかに選定作業を開始します。民事再生に限らない事業再生全般におけるスポンサー選定に関する手続や留意事項は以下のリンク先をご参照下さい。

民事再生に特有の手続として、裁判所の許可で行う事業譲渡などがありますので、それについては、以下のリンク先にまとめましたので、ご参照下さい。計画外事業譲渡などについても触れています。なお、スポンサー契約の締結は、裁判所によっては、監督委員の同意事項となっています。

⑺ 再生債権者による債権届出→再生債務者による債権認否

再生債権者が裁判所が定める債権届出期間内に再生債権を届出94条
     ↓
再生債務者が届出債権に対する認否を行い、認否書を裁判所に提出(101条
     ↓
債権調査期間(105条

⑻ 再生債務者による財産評定124条1項)及び125条報告書の提出

財産評定は、再生債務者が保有する資産を処分価格にて評価を行い、清算配当率を算出するものです。

125条報告書は、再生手続開始に至った事情などを改めて報告するもの。

財産評定、125条報告の具体的な内容については、以下のリンク先にまとめしたので、ご参照下さい。

⑼ 再生計画案提出

再生債務者(まれに再生債権者も)、は予め決めれらた期限に再生計画案を提出いたします。
スポンサーとの交渉が長引くなどして、再生計画案を当初の提出期限までに提出できない場合はは、提出期限までに、伸長申請を行わなければなりません(163条3項)。伸長申請は、特別の事情がある場合を除いて2回を超えてすることができません(民事再生規則84条3項)。

なお、再生計画の具体的な内容については、以下のリンク先にまとめましたので、ご参照ください。付議決定されるまでの間であれば、裁判所の許可を得て計画案を修正することが可能です(167条)。

裁判所による付議決定169条)後に再生債権者に議決票が送付されます。
再生計画案の説明会を行い、再生債権者の理解を得ることが一般的です。

⑽ 再生計画案の決議認可決定174条)→確定176条

再生計画案の可決のためには、届出債権者の頭数の過半数かつ届出債権者の議決権額の2分の1以上の賛成が必要です(172条の3)。

可決後、裁判所は、再生計画の認可を決定します(174条)。

再生計画は認可決定だけでは効力は生じません。不服申立てとしての即時抗告期間が経過して認可決定が確定した時点で効力が発生します176条)。通常、認可決定から4週間程度で確定します。

再生計画案認可決定確定までの手続について、以下のリンク先にまとめましたので、ご参照ください。

⑾ 再生計画の遂行→再生手続の終結

再生債務者は、再生計画の内容に従って、弁済を履行します。

再生計画の履行が完了したとき又は、再生計画認可決定確定後3年間の経過のいずれか早い時期に、再生手続は終結します(188条2項)。

再生計画認可決定後の再生手続期間中に留意すべき事項と、再生手続の終了については、以下のリンク先にまとめましたので、ご参照下さい。