このページでは、再生手続におけるDIPファイナンスについて、説明をしています。

再生手続が開始すると、再生債務者は仕入債務や経費の支払を、現金払いないし、短期でしめて支払うことが一般的です。そのため再生債務者の資金繰りは忙しくなるため、再生手続ではDIPファイナンスを利用することがよくあります。

1 DIPファイナンス契約までの流れ

DIPファイナンス契約までのおおよその流れは以下のとおりです。

⑴ 事前の検討

必要額や担保対象物の選定を検討するとともに、必要資料(申立関係資料、過去の税務申告書など)の準備などを債務者側で進めます。

⑵ ファイナンサーの選定

再生債務者の人的つながりや、申立代理人側の人的つながりなどを利用して、ファイナンサーを探索・選定します。一部の市中銀行、ノンバンクなどがDIPファインナンスを扱っています。
再生債務者の属性やDIPファイナンスの内容によって、ファイナンサーも異なります。
例えば、小口のDIPファイナンスであったり、担保となる手形等の銘柄があまり良くないと、大手金融機関は対応してもらえないことが多いです。
なお、スポンサー(候補者)から資金調達できることもあります。

⑶ 契約条件の交渉

金融機関と、契約条件の交渉、契約条項の詰めを行います。

⑷ 裁判所の許可又は監督委員の同意など(必要に応じて)

許可又は同意を得るには、DIPファイナンスの必要性及び、条件の適切性がポイントとなります。なお、申立後開始決定前のDIPファイナンスであれば、共益債権化(民事再生法120条)の承認も必要となります。

⑸ 契約締結及びローンの実行

契約締結後、担保設定登記等を具備したうえで、ローンが実行されます。

2 DIPファイナンスの契約条件

⑴ はじめに

契約書は、通常金融機関側で準備するので、再生債務者は、提示された契約内容に対して必要に応じてコメントを行う方法で契約条件を詰めていきます。DIPファイナンス市場の成熟化とともに、契約条件も定式化しているところですが、債務者の誓約事項(コベナンツ)などは、個別の案件毎に、交渉によって変更すべき個所もあるので、留意が必要です。

⑵ DIPファイナンスのコベナンツ

DIPファイナンスに記載される特徴的なコベナンツの例としては、以下のものがあります。いずれも協議により詳細を詰めていくことになります。

債務者の報告義務手続の状況及び、損益状況、日繰資金繰り表などを定期的に報告することが求められることが多いです。スポンサーとの交渉状況について報告を求められる場合もあります。
貸付人の事前承諾事項キャッシュフローに重大な影響をあたる事項(事業譲渡、スポンサー選定など)を再生債務者が実行する場合には、貸付人の事前承諾が必要とされることが多いです。
財務コベナンツ法的手続が順調に推移しているか否かを数字的な面から担保するため、売上高やEBITDAなどが一定額を上回る又は下回るように義務付けられることが多くあります。再生債務者側としては、過度に厳しい内容としないことが必要となります。
もっとも、財務制限条項は、ある程度安定した企業を前提としたものでああることことから、再生債務者の場合には、なじまない面もあり、要求されないケースもあります。

⑶ DIPファイナンスの担保

DIPファイナンスの保全は、担保設定がメインになりますので、なんらかの担保を要求されることが一般的です。

再生債務者の不動産に新たな抵当権を設定する担保余力があることはまれで、担保は売掛債権・手形又は在庫が主なものとなります。
手形割引、手形や売掛債権に対する譲渡担保権の設定、手形や売掛債権を信託設定し受益権に質権を設定する方法、在庫に集合動産譲渡担保が設定する方法などにより、担保を設定することが多いものと思われます。