このページでは、財産評定について、その報告すべき内容などについてまとめています。

報告関係は、裁判所の許可及び監督委員の同意と並んで重要なものです。債権者等が閲覧する可能性もある書類ですので、記載には留意する必要があります。

1 財産評定とは

財産評定とは、民事再生手続開始時点における財産の価値を算出する(評定する)作業をいいます。

財産評定は、会社の実態の資産状態を算出して、破産配当率を算出する根拠にもなります。裁判所や債権者が、再生計画案に基づく配当率の妥当性を検証する、重要な資料となります。

2 財産評定の作成基準及び提出、開示など

財産評定の作成基準、提出時期などについて整理すると以下のとおりです。

なお、日本公認会計士協会近畿会に、財産評定の参考書式が掲載されています。
https://www.jicpa-knk.ne.jp/

⑴ 作成基準時点

作成は、再生手続開始を基準時とします(民事再生法124条1項

したがって、開始決定日を月末にしたほうが、財産評定を作成しやすいことが多いです。規模の大きな会社などであれば、裁判所と相談をして、開始決定日を月末にすることもあります。

⑵ 作成にあたっての資産の評価基準

財産評定は、処分価値をもって行うとされています(民事再生規則56条1項本文
これは、財産評定の主な目的が、清算価値保証原則(民事再生法174条2項4号参照が満たされているかを確認することにあるためです。そこで、破産配当率の計算書を、財産評定と一体のものとし作成をすることが一般です。
なお、例外的に、継続価値で評価をすることも可能とされています(民事再生規則56条1項ただし書)。

⑶ 具体的な作成方法

会社の規模にもよりますが、公認会計士に依頼して、公認会計士と会社の経理担当者で協議のうえ作成することが一般的です。

裁判所に提出する前に、監督委員補助者の公認会計士の確認を取ることも行われています。
なお、例外的な措置ですが、評価の客観性が特に重視される場合には、裁判所が財産評定の評価人を選任をすることもできます(民事再生法124条3項)。

⑷ 提出時期

作成後、遅滞なく裁判所に財産目録及び貸借対照表を提出します(民事再生法124条2項。なお、破産配当率の計算書も提出されるのが一般的です。
通常は、裁判所から提出期限を指示されます

⑸ 開示

再生債務者の主たる営業所又は事務所に備え置いて債権者への閲覧謄写に供します(民事再生規則64条1項)。実際には、金融機関などには配布することもします。

3 財産評定の主なチェックポイント

財産評定の主なチェックポイントは以下のとおりです。

   項目     チェックポイント
債権(売掛金)金額的なインパクトが大きい多いです。
通常、回収可能性を考慮して一定の減額をしますが、特に、減額幅が大きいもの(=不良債権)は精査する必要があります。
棚卸資産評価が困難なことが多く、専門業者に依頼するケースもあります。
処分価格が二束三文だと判断される場合には、かなりの減額を行うことになります。
不動産不動産の重要性にもよりますが、(簡易)鑑定評価を取ることが多いです。
不動産鑑定評価を取得した場合は、特定価格(=早期売却価格)を評定額とします()。
特定価格は正常価格の7割程度であることが多いとされています。
還付税金比較的金額が大きくなることもあるので注意が必要です。
破産配当率財産評定は、清算価値保証原則が満たされているかを確認することに主眼があるので、破産配当率を計算したものを添付するのが一般的です。
破産配当率の計算の際に、破産管財人費用以外に、解雇予告手当や、優先債権等(退職金など)の支払予定も落とさないようにする必要があります。

)不動産鑑定評価基準第5章では、不動産価格について以下のとおり定義されています(限定価格、特殊価格は省略しています)。

正常価格   市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格。
特定価格市場性を有する不動産について、法令等による社会的要請を背景とする評価目的の下で、正常価格の前提となる諸条件を満たさない場合における不動産の経済価値を適正に表示する価格をいう。 特定価格を求める場合を例示すれば、次のとおりである。 (1)資産の流動化に関する法律又は投資信託及び投資法人に関する法律に基づく評価目的の下で、投資家に示すための投資採算価値を表す価格を求める場合 (2)民事再生法に基づく評価目的の下で、早期売却を前提とした価格を求める場合 (3)会社更生法又は民事再生法に基づく評価目的の下で、事業の継続を前提とした価格を求める場合