このページでは、裁判所に提出されている民事再生手続に関する記録の閲覧につき、ご説明をしています

例えば、再生債権者が申立書の内容を確認したいといった場合、裁判所で閲覧をすることが可能です。一方で、再生債務者は、裁判所に申立てることにより、一定の要件を満たす場合、記録の閲覧を制限することが可能です。

このページでは、再生手続の記録の閲覧と閲覧制限に関して、まとめています。

1 記録の閲覧・謄写

利害関係人は裁判所で記録の閲覧・謄写が可能です(民事再生法16条、民事再生規則9条)。

閲覧を希望する者は、利害関係人であることを証する書面を添付したうえで閲覧申請を行い、閲覧等をします(東京地裁の場合、記録閲覧室で閲覧等を行います)。

利害関係人とは、再生債務者に法律上の利害関係を有している者で、再生債権者などが該当します。
一方で、再生債務者所有不動産の買受希望者や、再生債務者代表者に対する債権者など、利害関係が事実上・経済上のものである場合は、利害関係人に該当しないと解されます(参考裁判例:東京地決H24.11.28)。

東京地決H24.11.28(破産):利害関係人に該当しないとして閲覧謄写が認められなかった事例

裁判例の詳細を見る
破産者甲教団の破産管財人乙とX(甲教団の後継と主張しています。)は、甲教団に対する破産債権の残額をXが自己の債務として引き受けること、Xは当該債務のうち、9億6000万円を平成17年6月末日までに分割して乙に支払うこと、乙は、当該金員を含め形成された破産財団を基に甲教団の最後配当を実施し、破産手続を終結する旨合意しました。また、乙と甲教団犯罪被害者支援機構は、平成21年3月18日、破産財団がXに対して有する合意に基づく残債権を当該機構に債権譲渡する旨合意し、Xは、甲教団の破産事件終結後も、当該機構と民事調停を行っていました。かかる状況下で、Xが、自己が甲教団の後継団体であるところ、乙との間の合意は、重畳的債務引受であり、Xは、破産債権者に対する関係で破産者と連帯債務者の地位にあること、Xは10年以上にわたり破産財団の増殖に寄与し続け、現在も支援機構に対して調停の当事者として対応していることから、Xは、破産事件によって直接的に自己の私法上の権利ないし法律的利益に影響を受けていることは明らかであり利害関係人に該当する旨主張して、甲教団の破産記録の閲覧謄写を請求したところ、裁判所が請求を拒絶する旨の処分したことから、これを不服としてXが異議申立てをしました。本決定は以下のように述べて、異議を却下しました。
「旧破産法には、閲覧及び謄写に関する直接の規定はないが、破産手続は原則として公開の法廷で審理裁判されないことから、破産事件記録は、同法108条が準用する民事訴訟法91条2項にいう『公開を禁止した口頭弁論に係る訴訟記録』に準じて、当事者及び利害関係を疎明した第三者に限り、同項及び同条3項に基づき閲覧及び謄写等が可能であると解すべきである。そして、ここにいう『利害関係を疎明した第三者』とは、破産事件に即していえば、破産手続によって直接的に自己の私法上又は公法上の権利ないし法律的利益に影響を受ける者を意味すると解するのが相当である。
・・・本件合意は、あくまでXが破産管財人に対し破産債権の残額相当額の債務を負担することを合意した債務負担契約(その実質は贈与契約)と解され、Xが破産債権者全員との間の合意により破産者(破産財団)と重畳的に破産債権残額について債務引受をしたものとは解されないから、Xが破産管財人ないし破産財団に対し、債務の履行に伴う求償権など何らかの法律上の権利を有するとは認められない。加えて、本件合意により発生した破産管財人のXに対する債権は、平成21年3月18日に機構に譲渡され、機構とXとの間で民事調停が係属中であるというのであるから、本件合意に基づく法律関係は、既に機構とXとの関係に移転していると認められる。
 以上によれば、Xが本件破産手続によって何らかの事実上の影響を受けることはあり得るとしても、直接的に自己の私法上又は公法上の権利ないし法律的利益に影響を受けるとは認められないから、Xは、旧破産法108条、民事訴訟法91条2項、3項の『利害関係を疎明した第三者』に該当しないというべきである。」

2 記録の閲覧制限

再生債務者は、裁判所に申立てることにより、一定の要件を満たす場合、記録の閲覧を制限することが可能です。概要以下のとおりです。

⑴ 閲覧制限ができる対象とは

閲覧制限が可能なのは、民事再生法17条1項で列挙されているものになります。

限定列挙ですので、それ以外の文書については閲覧制限を付けることはできません。

閲覧制限ができる主なものは以下の通りです。
41条1項の許可取得のために裁判所に提出した文書等
42条1項(事業譲渡許可)取得のために裁判所に提出した文書
125条2項に基づく裁判所への報告文書(月次報告等)

⑵ 閲覧制限ができる要件

閲覧制限を付するためには、閲覧等により、再生債務者の事業の維持再生に著しい支障を生じるおそれがあること、又は再生債務者の財産に著しい損害を与えるおそれがあることが必要です。

⑶ 閲覧制限の方法

閲覧制限をする場合には、文書を提出する際に、支障部分を特定したうえで、閲覧制限の申立てを行います(民事再生規則10条1項)。

また、申立に当たっては、対象文書等から、支障部分を除いたものを作成して裁判所に提出する(民事再生規則10条3項)。支障部分を除いたものが閲覧の対象になります。

⑷ 注意点

再生手続開始後に契約をする場合で、当該契約に守秘義務条項が入る場合があります(例えば、事業譲渡契約など)。

その場合、閲覧制限をかけないと、契約不履行となる可能性がありますので、閲覧制限をかけるのを忘れないように注意が必要です。もっとも、事業譲渡契約については、債権者の権利保護の観点から閲覧禁止が認められない場合もありますので、その場合は事業譲受人の了解を得て守秘義務条項をはずす必要があります。