このページでは、民事再生手続会社更生手続等の開始申立等が、権利濫用などとして争われた裁判例までについて紹介しています

1 開始申立が権利濫用などとして争われた事例

民事再生手続開始申立等が、権利濫用などとして争われた裁判例としては、以下のようなものがあります

東京高判H17.1.13(再生)再生計画の不認可決定確定した者が、再度民事再生手続開始の申立てをすることが権利の濫用にあたらないとした裁判例

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再生計画の不認可決定の確定した者が、再度民事再生手続開始の申立てをしたことについて、「申立権の濫用に当たるといえるような特別の事情があればともかくとして、第1次再生手続において再生計画の不認可の決定が確定したことに基づいて本件申立が一般的に不適法になるとはいえない」とし、また、再生手続と更生手続の調整は後者において図ることが予定されているとして、「更生手続開始の申立があったことを再生手続を開始するかどうかの判断に当たって考慮する必要はな」いとして、開始決定を認めました。

東京地判H25.11.6(再生) 甲社が民事再生手続開始の申立てをして開始決定を受けたのに対し、甲社の株主らXが即時抗告をしたところ、原決定を取り消され、申立ては棄却されました(その後甲社は破産手続開始決定を受けました)。そこでXらが甲社の役員などを相手に不法行為ないし取締役の第三者責任に基づく損害賠償請求をしましたが、「甲社による本件申立ては民事再生手続開始の申立権の適法かつ適切な行使であり、社会的にみて許容されない行為でもないから、権利の濫用に当たらず、不法行為を構成しない。」として認めなかった裁判例

東京地判令和元.5.31(会社更生) 銀行の会社更生の債権者申立が信義則に反して違法とは言えないとされた事例

2 その他 参考裁判例

東京地判H29.11.10(特別清算) 特別清算に至る一連の過程における取締役の責任が否定された事例

広島高岡山支決H14.9.20(破産) 債務超過にある市街地再開発組合甲に対して甲の理事らが行った破産手続開始の申立てについて、債権処理のスキームが進行中であることを理由に権利の濫用であるとした事例

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甲が債務超過にあることは否定できないが、甲及びその債権者その他の関係者間において、甲の清算については本件スキームに基づいて実行されることが合意され、同スキームに基づく清算が進行中であり、これにより、甲のA以外の債権者に対する債務は消滅することになる。
 一方、Aは、同スキームに基づく清算によって債権全額を回収することはできず、甲のAに対する債務は残存するが、Aは、甲に対する債権のうち同スキームに基づいて弁済を受けることができないものについてはこれを免除すること(債権放棄)に同意しており、Aは、甲について破産手続による清算を希望していない。
 破産手続は、総債権者に対する債務を完済することができない状態にある場合に、強制的に債務者の全財産を換価し、総債権者に公平な金銭的満足を与えることを目的とする裁判上の手続であるところ、以上によれば、甲の清算については本件スキームに基づいて実行することを相手方のすべての債権者が同意しており、これによって債権全額の回収を得ることができない債権者はAのみであるが、Aは残債権を免除することにも同意しているのであるから、甲については破産宣告の必要性に乏しい。
 また、前記のとおり、甲が債務超過に陥るについては、甲の違法、不正な資金流用ないし金銭の貸付が原因となっているところ、このような事態を踏まえて、甲総会で、本件スキームに基づいて甲を清算することが決議されたものである。そして、抗告人らは、甲の理事として上記不正資金流用等につき責任がないとはいえないところ、本件スキームに基づいて甲を清算することに反対であるとして、甲組合員の多数の意向に反し、甲の理事としての地位に基づき、本件申立てに及んでいるものである。
 このような事情を考慮すると、本件申立ては申立権の濫用というべきである。」