このページでは、民事再生計画案に定めるべき内容について、説明をしています。

再生計画案は、絶対定めなければならない事項、任意で定めることができる事項があります。一番重要なのが、権利変更(≒債権カット率)と、弁済方法(≒何年で返済するか)です。また、増減資をする場合には、その内容を定める必要があります。

最後に、再生計画案の内容が争われた事例についても触れます。

条文は、法律名がないものは民事再生法の条文です。

1 民事再生計画案に定めるべき内容

民事再生計画案に定めるべき内容をまとめると以下のとおりです。特殊な条項については以下の3を参照してください。

⑴ 絶対的記載事項

絶対的記載事項は必ず記載しなければならない事項をいいます。債権関係の事項です。

全部又は一部の再生債権者の権利変更154条1項1号
共益債権及び一般優先債権の弁済154条1項2号

⑵ 相対的記載事項

相対的記載事項は対象があれば記載しなければならない事項を指します。以下の事項があります。

知れている開始後債権があるときは、その内容(154条1項3号
債権者委員会の費用の負担に関する条項(154条2項
債務の負担及び担保の提供に関する条項(158条
未確定の再生債権に関する条項(159条
別除権不足額に対する適確な措置に対する状況(160条

⑶ 別紙

別紙として添付するのは、以下のようなものがあります。
①確定債権者一覧表及び弁済計画表
②未確定再生債権者一覧表
③別除権付再生再生一覧表及び別除権目録
④事業計画

上記のうち、④事業計画については、以下のリンク先をご参照下さい。

2 権利変更/弁済内容についての注意点

⑴ 弁済率は、清算価値保証原則を満たす必要があります。

弁済率は、清算価値保証原則25条2号、169条1項3号、174条2項4号)を満たす必要があります。端的には破産をした場合よりも弁済率が上回っている必要があります。

なお、分割弁済の場合には、弁済額を単純な総額で考えるのではなく、割引現在価値に引きなおして清算価値を上回るようにしなければならないと解されます。 もっとも、現在価値に割引く際の割引率に明確な基準はありません。その意味では、ややあいまいな点もあります。

⑵ 権利変更の基本及び、権利変更を定める際に留意すべき再生債権

再生計画案には、再生債権の元本及び開始決定までの利息及び遅延損害金について、弁済率及び弁済期間を定めます。弁済期間は原則として認可決定確定時から10年以内とする必要があります(民事再生法155条3項)。
開始決定後の利息及び遅延損害金については、全額免除を受けることが一般です(民事再生法155条1項、84条2項)。

再生計画案に権利変更(=債務カット率や、弁済方法など)を定める際に、留意すべき債権としては、①少額債権、②敷金返還請求権、③別除権不足額が未確定の別除権付債権、④再生債務者が保証人であった場合の債権などがあります。再生計画で権利変更を定める場合に、留意すべき債権については以下のリンク先に整理しましたので、ご参照下さい。

⑶ 弁済計画

再生債権の弁済計画は、大きく、一括弁済型と、分割弁済型に分かれます。

一括弁済は、スポンサーから弁済資金の提供を受けて一括弁済をしてしまうものです。スポンサー契約に基づきスポンサーが資金を拠出できることの確認が取れれば、履行可能性について問題になることはあまりありません。

分割弁済の弁済期間は、特別の事情がある場合を除き10年以内です(155条3項
分割弁済は、スポンサーがついたものの分割弁済する場合と、自主再建により分割弁済する場合があります。
自主再建型の再生計画案は、将来収益の見込み(事業計画)が重要です。将来収益による弁済の場合、将来収益の不安定性から弁済率を保守的(低く)定めがちですが、弁済率が低いと債権者集会での可決を得ることが困難になりますし、再生債務者の公平誠実義務(174条2項1号、38条2項)に反する可能性もあるので、慎重な対応が求められます。

なお、否認訴訟等が係属しており、その結果によって弁済率が変更になる可能性がある場合には、当該否認訴訟等の訴額によっては、追加弁済条項を設けて、否認訴訟等の結果に応じて一定の時期に追加弁済をする旨を定めることが必要となります(参考判例:東京高決H15.7.25

東京高決H15.7.25(再生) 詐害行為取消訴訟の受継をしなかったことが、再生債権者一般の利益に反するとされた事例

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Y(再生債務者)の債権者Xは、Yの債務者である甲に対し、債権者代位訴訟及び詐害行為取消訴訟を提起していたところ、Yに再生手続が開始されたため、これらの訴訟は中断され、Yの監督委員に選任された乙は、訴訟の帰趨が明らかでないことや、回収可能性が低いことなどを理由として受継しなかった。そこでYは、当該詐害行為取消訴訟等による回収を勘案しない再生計画案を提出し、認可されたのに対し、Xが即時抗告をした。 本決定は、「本件においては、監督委員が本件詐害行為取消訴訟の受継をしないで、弁済原資となる可能性のある債権の回収を怠っているのを放置したままで本件再生計画を成立させたものであり、再生債権者の利益に反するというべきである。このような事案においては、再生計画の内容として、勝訴するか、和解金が得られた場合(X側で応諾しなかったが、現実に本件再生手続における意見調整の中で3500万円を本件再生計画における弁済のための原資に上積みする和解案が提示された経緯等をも考慮すると、和解の可能性もあり得る。)を想定した条件付きの弁済計画条項をも予備的に付加すべきであって、それを内容としない本件再生計画は、『再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反すると』」(民事再生法174条2項4号)に該当する。」として、原決定を取消したうえで、再生計画案の変更の機会を与えるため再生裁判所に差戻しました。

⑷ 権利変更を受ける時期(債務免除を受ける時期)にかかる定め

再生計画に免除の時期についての定めがあれば、当該定めに従って債務免除益が発生しますが、そうでなければ、再生計画の効力発生時期は再生計画認可決定確定時とされており(176条)、債権認否書に記載された再生債権は再生計画の定めに従って変更されるため(179条1項)、債務免除の効力発生時期は、再生計画認可決定確定時となります。債務免除を受けた場合、再生債務者の益金(債務免除益)になって課税対象になるため、注意が必要です。

債務免除益は、青色繰越欠損金の利用や資産譲渡損・評価損の計上とぶつけるなど、適切なタックスプランニングをしないと、思わぬ税金が発生し、再建自体が立ちいかなくなります債務免除益の発生を、再生計画認可決定確定時点としない場合には、再生計画案に明記をしておく必要があります。
なお、不足額が確定していない別除権付再生債権は、不足額確定後に権利変更されるところ、別除権の不足額確定時をコントロールすることは困難なことが多く、かつ、別除権付再生債権にかかる免除額は金額が巨額になることも多いので、留意が必要です。

3 特殊な事項を含んだ内容

再生債務者の減増資や、事業譲渡などは、再生計画案に記載することが必須ではありません。また記載せずとも実行可能なものです。
しかしながら、記載することで、株主総会が不要になるなど特殊な効果が発生する場合があることや、記載することで債権者に対して再生債務者の考え方を周知するという効果が期待されることから、再生計画を作成する時点で予定している場合には記載されることが一般的です。

そのようなものとして、①減増資、②事業譲渡/会社分割、③DES、④将来スポンサーが入った場合の条項、⑤清算型計画案などがあります。詳細については、以下のリンク先にまとめましたので、ご参照下さい。

 再生計画案の内容に関する紛争

再生計画案の内容に関する紛争として、以下のようなものがあります。

⑴ 特定の債権を劣後化することの可否/劣後化しないことの適否

 民事再生法155条1項は「再生計画による権利の変更の内容は、再生債権者の間では平等でなければならない。ただし、不利益を受ける再生債権者の同意がある場合又は少額の再生債権若しくは第84条第2項に掲げる請求権について別段の定めをし、その他これらの者の間に差を設けても衡平を害しない場合は、この限りでない。」と定めています。
 この155条1項ただし書を一つの根拠に、民事再生手続を開始するに至った責任の一端が親会社等にあると考えられる場合、再生債務者が親会社等の再生債権を親会社の許可なく劣後化して扱うことが許されるか、逆に、親会社の再生債権を劣後化しなければならないのではないか(=劣後化しないことが許されるか)が争われることがあります。
 会社更生事件において、親会社の株式及び更生債権を、減資率・弁済率において劣位に扱ったことについて、会社破綻の原因が親会社にあることを理由として、衡平に反しないとした裁判例があります(福岡高決S56.12.21)が、この結論は必ずしも一般化できないものと考えられます参考裁判例:名古屋高決S59.9.1)。
 逆に、親会社債権を劣後化しないことは、(原則として)違法にはならないと考えられています(東京高決H23.7.4東京高決H22.6.30)。

裁判例の詳しい内容は、以下のリンク先をご参照下さい。

⑵ ゴルフ場の計画案で、債権者平等原則が問題となった事例

ゴルフ場の会員債権は、預託金債権とプレー権が複合しているところ、プレー権は従前通り保護する内容の再生計画案とすることが一般的です(プレーする者を維持することが将来の収益となるためです)。
そのことが、金銭債権だけを有している一般債権者や、退会債権者(プレー権を維持しない会員債権者)との間で債権者平等に反するとして紛争になることが時々あります。以下のような裁判例があります。

東京高決H14.9.6(再生) 再生計画案の平等原則違反が争われた事例(平等原則に反しないとされました。)

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ゴルフ場を経営する再生債務者Yは、概要、一般債権者及び退会する会員債権者は98%免除したうえで10回の分割弁済、会員契約を継続する会員債権者はプレー権を維持するとともに85%の免除したうえで10年間据え置きのうえ据置期間経過後に弁済をする内容の再生計画案を提出し、認可決定がなされました。これに対し、再生債権者Xらが、衡平を害するものであるとして即時抗告をしたが、本判決は、「会員の債権は、通常の金銭債権とは異なり、金銭債権である預託金返還請求権のほかにゴルフ施設利用権を併せ持つという特殊性があるので、退会会員については一般債権者と同様の弁済期間・弁済率を定め、プレー会員については、施設利用権を認める代わりに、一般債権者の弁済期間内は退会を認めず、同期間経過後に退会会員と別個の弁済率により弁済するものとするなど、プレー会員と退会会員及び一般債権者を別個に取り扱うことは、合理的理由があり、また、Xらも指摘するように、退会会員の比率によってYの弁済額が変動し、弁済原資となる年会費収入やゴルフ場の売上げも変動することとなるので、プレー会員の債権に限って付保することは、会員に対して会員契約の継続を希望するインセンティブを与え、退会会員の比率をできるだけ低く抑え、本件再生計画の円滑な遂行に資するものとして合理性があるといえる。そして、会員は、本件再生計画の認可決定(原決定)の確定後に、退会するか、会員契約を継続するかの選択ができることも併せ考慮すると、本件再生計画におけるプレー会員と退会会員及び一般債権者との間の差異の程度は、いまだ平等の範囲内にあるというべきであり、本件再生計画が民事再生法155条1項に反する違法なものとはいえない。」などとして、抗告を棄却しました。

東京高決H13.9.3(再生) 再生計画案の平等原則違反が争われた事例

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ルフ場を経営する再生債務者Yが、裁判所の許可を得て一括してゴルフ事業を甲社に事業譲渡し、預託金債権者は預託金債権により甲社に現物出資をすることが可能とし、現物出資に応じた預託金債権者のプレー権は存続させるが弁済をゼロとし、現物出資を行わなかった預託金債権者はプレー権を失うが0.1%弁済を行うという内容の計画を提出しました。なお、Yは事業譲渡後解散し清算するという清算型の再生計画でした。当該再生計画は認可決定を受けましたが、預託金による現物出資を応じなかった会員債権者Xらが、即時抗告をし、現物出資に応じなかった預託金債権者について、①プレー権の存続に比較して弁率率が低いこと及び、②プレー権を金銭的に評価しなかったことについて平等原則に反するとして争いましたが、
本決定は、以下のとおり判示して抗告を棄却しました。
「・・・以上の事実によれば、本件再生計画案は、裁判所の許可を得てゴルフ場営業を一括して甲社に営業譲渡し、ゴルフ会員権者のプレー権を存続させる一方で、預託金債権の現物出資により譲受会社の新株を取得させることによりゴルフ会員の預託金債権を消滅させ、別除権の目的となった不動産の不動産収入で一般再生債権者の債権の一部弁済をし、最終的には再生債務者を解散して清算するという清算型の弁済計画であったと認められる。・・・実質的に存続を保障されたゴルフプレー権(その部分の限りでは100%弁済の実質を持つこととなる。)を金銭評価することには困難な点があっても、ゴルフ会員権の市場価額が預託金債権の額の何倍にも騰貴したのはゴルフプレー権の実質的内容や優遇性等によって定まる需要と供給上の評価の結果であったことにかんがみれば、権利変換された後の本件株主制ゴルフ会員権も将来的に市場価額が形成され、少なくとも数十万円以上、場合によっては数百万円の価額が形成される可能性が高いということができる・・・。そうすると、このプレー権を存続させるゴルフ会員権の価額が預託金債権の0.1パーセントの額よりも高額になる蓋然性は極めて高くなるというべきであるから、本件再生計画案においては、一般再生債権者とゴルフ会員権者との間で実質的な不平等になる可能性があるといわざるを得ない(なお、ゴルフ会員権者の間においては、甲社に預託金債権を現物出資してその株式を取得するか、再生債務者に対する預託金債権者として再生計画上の弁済を受けるかを選択することができることとなっているから、実質的な衡平が害されているとまではいえない。)。・・・ゴルフプレー権を存続しなければ社会問題となるというような理由で、特別に優遇する処理をしたことに合理性があるとは認められない。また、・・・本件再生計画案に対してゴルフ会員権者のうち、甲社に預託金債権を現物出資していない者数名が再生計画案に反対票を投じているというのであるから、前記の実質的不衡平が是正されているとは言い難い。
 もっとも、本件再生計画案を形式的に見ると、ゴルフ会員権を甲社の株主権に権利変換しプレー権を引き続き受容するのは、同会社であって再生債務者そのものではないから、旧来のゴルフ会員権の同会社における株主制ゴルフ会員権への転換は、再生計画上の弁済行為ないしこれに類似する行為とはいえない。その限りでは再生計画案そのものに不衡平があるとはいえないが、そのような処理がなされたのは、再生手続中に本件ゴルフ場の営業譲渡がなされた結果であるので、そのことを踏まえて実質的に再生債権者の平等を吟味すべきである。この場合、不利な立場に立つ一般再生債権者の全員がこの実質的な再生計画案の内容を承認しているのであれば、不平等であっても実質的な衡平を害するとまではいえないことになろうが、・・・一般再生債権者のうち4名・・・は再生計画案に反対票を投じていたというのであるから、一般再生債権者が全員この実質的な再生計画案の内容を承諾しているとはいえず、実質的な衡平が保たれていたとはいえない。
 さらに、・・・もともとゴルフ会員権者の権利は、預託金債権のみならず、プレー権も債権として含まれるものであるから、甲社に預託金債権を現物出資せず、ゴルフプレー権を承継させなかったゴルフ会員権者については、そのプレー権をも金銭に評価して(例えば、メンバーフィーとヴィジターフィーの価額差にメンバーの平均年間利用回数を乗じ、土休日の優先利用権の価値を評価したものを合算し、それからメンバーの負担する年会費を控除した金額を適正な利回りで還元した元本価額などが評価方法として考えられる。)、その金額を再生債権(の一部)として届けさせ、議決権の額を定める(民事再生法87条1項3号)べきであった。
 ・・・もっとも、前述のとおり、再生計画案に反対票を投じたゴルフ会員権者でない一般債権者のうち4名中の3名は、当審における段階で、不利益条項を承認し、反対の意思表示を撤回する旨表示しているから、今日の段階では、本件再生計画におけるゴルフ会員権者ではない再生債権者に対する不利益取扱いについて、反対の意思を表明しているゴルフ会員権者ではない再生債権者は1名に過ぎず、概ねゴルフ会員権者ではない再生債権者の同意があるものということができる。
 また、再生計画案に対して反対票を投じた再生債権者11名のうちのゴルフ会員権者である再生債権者の中には、その後に株主権への権利変換の方法を選択した者もいたことから、今日ではゴルフ会員権者である再生債権者で実質的に反対の意思を有しているのは4名・・・に止まっていることは、前述のとおりである。
 以上の事情を総合すると、本件再生計画案の議決は、法律の規定に違反して成立するに至ったものといわざるを得ないが、これに対する債権者集会の投票結果の内容に照らしてみれば、決議の方法の不適法は最終的に可決の結果に影響を及ぼさなかった可能性が高いということができ、また、本件再生計画の内容の前述の不平等は、株主制ゴルフ会員権の評価次第では実質的な不衡平をもたらす可能性が高いが(民事再生法174条2項1号本文)、その評価は、追加募集があった場合を含めて、今後の本件ゴルフ場の運営内容や状況及びゴルフ会員権市場の動向によって左右され、流動的なものといわざるを得ないから、実質的不衡平が明白であるとまではいうことができず、本件再生計画案に反対している再生債権者の数が極めて少なくなっていることにかんがみると、その不衡平さも軽微なものということができる。

⑶ その他

上記の他に、再生計画の内容が争われた裁判例として、以下のようなものがあります。

東京高決H15.7.25(再生) 詐害行為取消訴訟の受継をしなかったことが、再生債権者一般の利益に反するとされた事例

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Y(再生債務者)の債権者Xは、Yの債務者である甲に対し、債権者代位訴訟及び詐害行為取消訴訟を提起していたところ、Yに再生手続が開始されたため、これらの訴訟は中断され、Yの監督委員に選任された乙は、訴訟の帰趨が明らかでないことや、回収可能性が低いことなどを理由として受継しませんでした。Yは当該詐害行為取消訴訟等による回収を勘案しない再生計画案を提出し、認可されたのに対し、Xが即時抗告をしました。
本決定は、「本件においては、監督委員が本件詐害行為取消訴訟の受継をしないで、弁済原資となる可能性のある債権の回収を怠っているのを放置したままで本件再生計画を成立させたものであり、再生債権者の利益に反するというべきである。このような事案においては、再生計画の内容として、勝訴するか、和解金が得られた場合(X側で応諾しなかったが、現実に本件再生手続における意見調整の中で3500万円を本件再生計画における弁済のための原資に上積みする和解案が提示された経緯等をも考慮すると、和解の可能性もあり得る。)を想定した条件付きの弁済計画条項をも予備的に付加すべきであって、それを内容としない本件再生計画は、『再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反すると』」(民事再生法174条2項4号)に該当する。」として、原決定を取消したうえで、再生計画案の変更の機会を与えるため再生裁判所に差戻しました。

最決H20.3.13(再生) 民事再生申立前の債権譲渡等により、再生計画認可の決議が不正な方法によって成立した場合に該当するとされた事例

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再生債務者Yが再生手続を申立てる前、債権者はX1、X2、A、Yの代表取締役甲、Yの取締役乙、Bの6名であったところ、BがYの取締役丙(甲の長男)に債権譲渡し、さらに、丙が当該債権の一部をYの取締役丁(甲の弟)に譲渡したため、申立直前において、Yの債権者は、X1、X2、A、甲、乙、丙、丁の7名となっていました。なお、BのYに対する債権は、連帯保証債権で、かつ、回収可能性が無いものでした。かかる状態で、Yは民事再生を申し立て、再生計画は、甲、乙、丙、丁の賛成により可決し、認可されたため、Xらが即時抗告をしたところ、抗告審で認可決定を取消されました。
Yが許可抗告をしましたが、本決定は以下のとおり判示して棄却しました。 「法174条が、再生計画案が可決された場合においてなお、再生裁判所の認可の決定を要するものとし、再生裁判所は一定の場合に不認可の決定をすることとした趣旨は、再生計画が、再生債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し、もって当該債務者の事業又は経済生活の再生を図るという法の目的(法1条)を達成するに適しているかどうかを、再生裁判所に改めて審査させ、その際、後見的な見地から少数債権者の保護を図り、ひいては再生債権者の一般の利益を保護しようとするものであると解される。そうすると、法174条2項3号所定の『再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき』には、議決権を行使した再生債権者が詐欺、強迫又は不正な利益の供与等を受けたことにより再生計画案が可決された場合はもとより、再生計画案の可決が信義則に反する行為に基づいてされた場合も含まれるものと解するのが相当である(法38条2項参照)
 ・・・そうすると、本件再生計画案は、議決権者の過半数の同意が見込まれない状況にあったにもかかわらず、再生債務者Yの取締役である丙から同じく再生債務者Yの取締役である丁へ回収可能性のない債権の一部が譲渡され、再生債務者Yの関係者4名が再生債務者Yに対する債権者となり議決権者の過半数を占めることによって可決されたものであって、本件再生計画の決議は、法172条の3第1項1号の少額債権者保護の趣旨を潜脱し、再生債務者である再生債務者Yらの信義則に反する行為によって成立するに至ったものといわざるを得ない。本件再生計画の決議は不正の方法によって成立したものというべきであり、これと同旨をいう原審の判断は是認することができる。」