このページでは、民事再生計画案に、減増資や事業譲渡などを定める場合の留意点について、説明をしています。

そのようなものとして、①減増資、②事業譲渡/会社分割、③DES、④将来スポンサーが入った場合の条項、⑤清算型計画案などがありますので、順番にご説明しています。

条文は、法律名がないものは民事再生法の条文です。

1 減増資

⑴ はじめに

再生計画案に以下の定めをすることで、発行済株式の無償取得スポンサーを割当先とする募集株式の発行による株主変更を株主総会の特別決議等なく再生計画のみで行うことができます。

いずれも、再生計画案提出前に、あらかじめ裁判所の許可を得ることが必要です(166条、166条の2)。

⑵ 発行済株式の無償取得(自己株式取得・資本金の減少等)(154条3項 161条 183条)

再生計画案によって、自己株式の無償取得ができます。

債務超過が裁判所の許可の要件です(166条2項)。株主に送達又は公告が必要です(166条3項、10条3項)。

⑶ 募集株式を引き受ける者の募集に関する定め(154条4項 162条 183条の2)

譲渡制限株式について、再生計画案に集株式を引き受ける者の募集に関する定めをすることで、株主総会の特別決議なく、第三者割当増資が可能になります(154条4項)。なお、譲渡制限のない株式は対象となっていませんが、譲渡制限のない株式は、有利発行でなければ取締役会決議で募集事項を決定できます(会社法201条)。

認可決定に対する抗告等により認可決定確定日がずれる可能性を考えると、募集株式の発行の時期を特定の日と定めるより「認可決定確定から1ヶ月以内」等と定めるほうが安全です。

債務超過 ・事業継続に欠くことができないこと が裁判所の許可の要件です(166条の2第3項)。株主に送達又は公告が必要です(166条の2第4項、166条3項、10条3項)。

2 事業譲渡/会社分割

再生計画案に、事業譲渡や会社分割を行う旨を定めることは可能です。

事業譲渡については、裁判所から株主総会の代替許可を得ると株主総会が省略できます(43条)。会社分割については、同様の定めはありません。

3 DES型の民事再生

DESを内容とする再生計画案とは、再生債権者に対する弁済(の一部)をキャッシュでなく株式交付とする計画案を指します

非上場会社の株式は換価が困難であり、DESにより再生債務者の株式を取得することは再生債権者にとってあまりメリットはないため、中小企業では実例はほとんど無いと思われます。
上場維持型の民事再生では、過去に利用された例があったようです。

4 将来スポンサーが入ることを念頭におく場合

当初は自主再建で進めるが、後からスポンサーが付いた場合に備えて、一括弁済することが可能な条項を入れておくべき場合があります。この場合、債権者平等の観点から、全債権者平等に弁済をするように定める必要があると考えられます。また、一括弁済する際に、弁済予定額の単純な合計額を全額弁済する旨を定める場合もあるが、弁済時点において将来の弁済額を一定の割引率で割り引いた金額を一括弁済する旨を定めることも可能と考えられます。

会社更生の事例で、更生計画により、更生会社が発行済株式の全部を無償で取得し、役員、従業員、一定の更生債権者等に代物弁済として新たに「取得条項付株式」を割り当てた事例があるようです。スポンサー選定がなされた時点で、スポンサーの増資資金等を取得資金とし、取得条項に基づき債務者が当該種類株式を取得し、スポンサーの更生会社に対する持株比率を100%にすることが可能となります。
このスキームは民事再生でも利用できる可能性があります。もっとも再生計画案を可決のため、「取得条項付種類株式」を割り当てることに、過半数の再生債権者の納得を得ることが必要です。

5 清算型計画案

清算型計画案を作成することも許容されています。例えば、全部の事業をスポンサーに譲渡したような場合には、再生債務者の解散を前提とする清算型計画案が作成されます。
清算型計画案の内容は、一般的にはシンプルなものとなります。

なお、会社法の定めに従って処理を進めなければなりませんので、特に以下の二点には注意が必要です。
解散のための株主総会決議(特別決議 会社法471条3号、会社法309条)は省略できません。したがって、裁判所の代替許可を取って事業譲渡をした場合でも、株主総会の解散決議が得られない場合、処理に困難をきたすことがあります。そこで、スポンサーへの事業譲渡後、民事再生法166条1項、166条の2第2項の裁判所の許可を得て発行済株式の無償取得をしたうえで、代表者又は申立代理人等を割当先とする募集株式の発行(1株)する方法により、株主を整理することが実務的には行われています。
清算手続は会社法に沿った手順を踏むことになります。そのため、例えば、債権申出期間中は弁済を行うことができなくなります(会社法499条1項、500条1項)。

また、清算中も各年度に所得が発生した場合には法人税が発生しますのでその点も注意が必要です。債務免除を受けると、免除益課税が発生する可能性があるので、実務的には、免除時期を最終弁済時とする対応がされていることが多いものと推定されます