このページは、特別清算手続についての入り口のページになります。特別清算手続の全体像をご説明するとともに、各論点等の説明へのリンク先を案内しています。

特別清算手続の根拠法は会社法になります。資産超過の会社を清算する場合は通常清算となり、債務超過の会社を清算する場合が特別清算となります。特別清算は破産とは異なり、税金などはすべて支払えることが前提となります。そこで、特別清算で処理できるかどうか、その見極めから検討が必要となります。

手続としては、破産ほどドラスティックではなく、かなりゆるやかな処理になります。

1 特別清算手続申立前の検討及び準備

⑴ 申立前に検討すべき事項

特別清算は破産とは異なり、税金などはすべて支払えることが前提となります。そこで、特別清算で処理できるかどうか、その見極めから検討が必要となります。具体的に検討すべき事項は以下のリンク先をご参照ください。リンク先には、破産手続と特別清算手続の比較も載せています。

⑵ 申立を決めた後の準備

申立前に、ある程度準備をしておくことも重要です。具体的に準備すべき事項は、以下のリンク先をご参照ください。

2 申立以降の特別清算手続の全体像

特別清算手続き全体の流れは概要以下の通りとなります。

なお、解散決議特別清算の申立日を同日とすること及び、協定案の可決認可決定を得る方法で進める場合を念頭に記載しています。なお、申立日からの日数はあくまでも目安で、事案によって異なります。

申立からの日数        
(目安)
内容(条文はすべて会社法
解散決議及び申立日株主総会の解散決議(特別決議) (471条3号、309条2項11号

株主総会の財産目録等の承認(492条3項

法定の清算人(取締役)以外が就任する場合 や定款変更が必要な場合
⇒株主総会の清算人選任決議(普通決議)(478条1項3号、466条、309条2項11号

解散公告・債権申出催告499条

特別清算の申立て510条・511条
参考裁判例:東京地判H29.11.10特別清算申立てに至った取締役の責任が問題となった事案
裁判例の詳細を見る
X社は、一度、清算人により特別清算の申立てがされ、特別清算開始決定を受けたものの、当該清算人は辞任して新たな清算人が選任された後、開始決定後の約2年後に、会社を継続する旨の株主総会決議がされ、特別清算を終結する旨の決定を受けました。そこで、Xが、特別清算申立前のXの取締役らに対して、Xに損害を与えないという善管注意義務を負っていたところ、債務超過ではなかったXについて必要のない特別清算をする方針を決定し、Xを解散する旨の株主総会決議を成立させた上で特別清算申立てをしたなどとして、会社法423条1項、430条に基づき、損害賠償請求をしました。
本判決は「Xについては、本件特別清算申立ての当時、債務超過の疑いがあったものと認められる。そして、清算株式会社に債務超過の疑いがあるときは、清算人は特別清算開始の申立てをしなければならいのであるから(同条2項)、当時清算人であった甲において、本件特別清算申立てをしたことにつき善管注意義務に違反しその任務を怠ったとは認められない。」などとして、Xの請求を棄却しました。
(2週間以内)解散登記、清算人登記(926条、928条,976条
1週間特別清算開始命令(510条・514条
特別清算における清算会社の機関については3へ
開始命令の要件や効果は4へ
 債権者説明会(報告集会)の開催(562条)。なお、書面等で報告することが適当である場合には、報告集会は不要とされています。
2ヶ月債権申出催告期限(499条
債権の種類や扱い、担保権の扱い及び、相殺禁止規定の内容については5へ
 協定案の提出(563条)⇒協定案の作成から認可決定までの手続は6へ
 債権者集会の招集決定(547条~551条、566条、900条
5ヶ月債権者集会 協定案認可決定552条~562条、567条 568条、569条、901条3項
6ヶ月協定認可決定確定や⇒認可決定から終結までの手続は6へ
 協定案に基づく弁済 特別清算終結決定の申立573条
⇒特別清算手続終結決定573条1号、902条2項
⇒清算結了登記(職権)(938条1項3号

3 特別清算における清算会社の機関

取締役、会計参与、会計監査人は、清算開始時にその地位を失います(会社法477条6項)。監査役(会)は維持されます。
特別清算の機関としては、①株主総会、②清算人(会)が基本的なもので、他に③監査役(会)、④調査委員、⑤監督委員が予定されています。

機関に関する詳細は、以下のリンク先をご参照下さい。

4 特別清算開始命令の要件及び効果について

特別清算開始命令の要件及び効果については、それぞれ以下のリンク先をご参照ください。

裁判所に提出されている特別清算に関する記録の閲覧については、以下のリンク先をご参照下さい。

5 特別清算における、債権の種類や扱い、担保権の扱い、相殺禁止規定の内容について

⑴ 特別清算における債権の種類や扱いについて

特別清算における債権は、①協定外債権と②協定債権とに分かれます。①協定外債権は限定的で、①協定外債権以外の債権が②協定債権となります。

それぞれの債権の具体的な内容や、特別清算手続における取扱いについては、以下のリンク先をご参照下さい。

⑵ 特別清算における担保権の扱いについて

担保権を有する債権者は、特別清算手続の制約を受けずに担保権を実行することが可能です。

しかしながら、担保物件の余剰価値や処分方法などについて調整が必要な場合があり、そのような場合に、清算人が担保権者と交渉するための時間的猶予を得るために、担保権の実行を一時的に止める手段として、中止命令会社法516条)があります。中止命令について、以下のリンク先をご参照下さい。

⑶ 特別清算における相殺禁止規定について

清算会社の債権者は原則として相殺が可能ですが(民法505条)、相殺が禁止される場合があります(会社法517条1項)。さらに、例外の例外として相殺が可能となる場合があります(会社法517条2項)。

さらに、清算会社の債務者が、後から債権を取得し相殺を主張することは原則として禁止されていますが(会社法518条1項)、例外があります(会社法518条2項)。

このような、特別清算における相殺禁止の規律については、以下のリンク先をご参照下さい。

6 協定案の作成から認可決定まで及び、認可決定から終結までについて

⑴ 協定案の作成から可決まで

作成された協定案は、債権者集会において、①投票者の過半数、②議決権額の3分の2以上の多数の賛成を得て、可決します(会社法567条)。協定案の作成から可決までについては、以下のリンク先をご参照下さい。

⑵ 可決から終結まで

可決された協定案は、裁判所による認可決定→確定(確定により効力が発生)→協定案に従った弁済→終結という流れで処理が進みます。協定案の可決から終結までについては、以下のリンク先をご参照下さい。

7 和解型について

協定の申出と可決でなく、すべての債権者との間で個別に和解契約を締結することにより、特別清算を終了させることもあります。
和解は裁判所の許可事項ですので(会社法535条1項)、許可を得ることが必要となります。なお、和解型の場合には、原則として債権者集会は開催しません(会社法562条ただし書)。

和解型の場合は、すべての債権者と和解契約を締結し、弁済及び債権放棄が終了した時点で、裁判所に対して特別清算手続の終結申立を行います(会社法573条)。裁判所は終結決定後、特別清算終結の登記を行います(会社法938条)。

8 特別清算の税務

特別清算の税務については以下のリンク先をご参照下さい。