このページは特別清算手続における、協定案の作成から認可決定までについてを説明しています。

協定案には、全部又は一部の協定債権者の権利変更に関する条項を定めます(会社法564条1項)。

そして、協定案は、債権者集会において、①投票者の過半数、②議決権額の3分の2以上の多数の賛成を得て、可決します(会社法567条)。

1 協定案の内容

協定案には、全部又は一部の協定債権者の権利変更に関する条項を定めます(会社法564条1項)。

なお、権利変更の条項は、債務の減免期限の猶予その他の権利の変更の一般的基準を定めるものとされ(会社法564条2項)、また、権利変更の内容は原則として債権者平等であることが必要です(会社法565条)。

2 債権者集会における決議

⑴ 債権者集会の招集から決議までの流れ

債権者集会の招集から決議までは、概ね以下の流れとなります。なお、債権者集会に対する報告および意見陳述以外の方法により債権者に周知させることが適当と認められる場合には、債権者集会の開催をせずに協定を成立させることも可能とされています(会社法562条ただし書)。

時系列留意点等
事前準備協定債権者以外の債権者に対しても招集通知を出す必要があるため(会社法549条4項参照)、実務的には、協定債権以外の債権は可能な限り弁済を済ませておきます。
裁判所への事前相談等協定案、債権者招集通知及び添付書類を裁判所に提出します(会社法552条2項)。
債権者集会の招集・清算会社が招集を行います(会社法546条)。
・債権者集会の2週間以上前に、会社法548条1項及び会社法規則153条の事項を記載したうえで、招集通知を発送するか(会社法549条1項)、電磁的方法により通知をします(会社法549条2項)。
・なお、議決権行使書面や参考書類を添付する必要があります(会社法550条、551条、会社法規則154条、155条)。
債権者集会指揮は裁判所が行います(会社法552条1項)。

⑵ 債権者集会における協定案の可決要件

債権者集会における可決要件は以下のとおりです(会社法567条

頭数投票者の過半数 →棄権者は、分母に算入されません。
議決権額議決権額の3分の2以上の多数
→棄権者も分母に算入されます。つまり、棄権者の議決権額は実質的に反対したのと同じ効果があります。

3 債権者集会における議決権額

⑴ 各債権の議決権額

各協定債権についての議決権の行使の許否及びその額は、清算会社が定めます(会社法548条2項、3項)。
協定債権者は、異議を述べることができ、その場合は裁判所が議決権額を定めます(会社法553条)。なお、利息・遅延損害金については、本来は集会日までに発生している額となりますが、一定の基準日を設定して計算することが一般的です。

特殊な債権の取扱いは以下のとおりです。

条件付債権裁判所の選任した鑑定人が評価をするのが原則です(会社法501条)が、実務的には清算会社で評価をすることもあります。
期限未到来債権債権者の了解があれば,一定の割引率で割り引くなどの方法で金額を算定しますが,了解を得られなければ全額(民法136条2項ただし書)。
担保付債権担保権の行使によって弁済を受けることができる金額については議決権をありません(会社法548条4項)。
よって、担保評価額を清算会社が算定する必要があります。

⑵ 議決権額確定までの流れ

議決権額確定までの流れは概要以下のとおりです。

時系列内   容
債権者との調整債権者集会の前に、各債権者に議決権額を通知し、すり合わせを行うのが一般的です。
清算会社の決定・各協定債権についての議決権の行使の許否及びその額は、清算会社が定めます(会社法548条2項、3項)。
・議決権として許さない旨を定めるか、申出がされた債権額と異なる債権額を定めた時は、遅滞なく裁判所に届け出ます(会社非訟事件等手続規則35条)。
招集通知への記載債権者集会参考書類として記載されます(会社法規則153条1号、会社法規則154条1項1号)。
異議及び裁判所の決定異議は債権者集会の席上で行われ、原則としてその場で裁判所の決定がなされます(会社法553条)。
裁判所の決定に対する不服申し立てはできません(会社法884条)。

⑶ 議決権行使方法に関する準則(会社法555条~558条)

議決権行使方法に関する準則は、概要以下のとおりです(会社法555条~558条)。

会社法555条協定債権者は、代理人による議決権行使が可能です。
会社法556条 550条1項 会社法規則156条協定債権者は書面による議決権行使が可能です。
会社法557条 550条2項 会社法規則157条協定債権者は招集者の承諾があれば、電磁的方法による議決権の行使が可能です。
会社法558条 567条2項 554条2項議決権は不統一行使が可能です。

4 協定案が否決された場合

裁判所は職権で破産手続開始決定をすることができます(会社法574条2項)。この場合、特別清算は終了します。破産に移行した場合、特別清算手続きのために清算会社に対して生じた債権、特別清算の手続きに関する清算会社に対する費用請求権は財団債権となります(会社法574条4項)。

なお、議決権の過半数、頭数の過半数で、債権者集会の延期・続行が可能ですので(会社法554条1項)、続行期日が設定され、再度協定案の決議をすることもあります。