このページは特別清算手続における、協定案の認可決定から終結までについてを説明しています。

可決された協定案は、裁判所による認可決定→確定(確定により効力が発生)→協定案に従った弁済→終結という流れで処理が進みます。

1 協定案の確定まで

⑴ 協定案確定までの流れ

協定案が可決された場合、清算会社は遅滞なく裁判所に対して協定認可の申立をしなければなりません(会社法568条)。

裁判所は不認可事由(会社法569条2項)が存しない限り認可決定を行います(会社法569条1項)。

協定案は、確定するまでは効力を生じません(会社法570条
通常、協定案認可決定の約2週間後に官報に掲載され、官報公告から2週間で確定します(会社法901条3項後段)。

⑵ 協定案確定の効果

協定案は確定すると、清算会社及び全ての協定債権者に対して効力を有します(会社法571条1項)。

ただし、担保権、清算会社の保証人・連帯債務者に対する権利等には影響を及ぼしません(会社法571条2項)。なお、個別和解については会社法571条2項は及ばないため、保証債務の附従性の原則により、別途の合意がない限り、保証人に対する権利も変更されてしまいます。

2 協定案確定後

清算会社は、協定案認可確定後に、すみやかに協定案に従って弁済を行います。

なお、協定案は「協定の実行上必要があるとき」は、変更することが可能とされています(会社法572条)。変更は、協定案の提出があった場合の手続に関する規定を準用します。

3 特別清算手続の終結

清算人は、全ての清算業務が終了したら、特別清算終結決定申立を行い(会社法573条)、終結決定の確定後,清算結了の登記が職権で行われます(会社法938条)。

なお、清算人は、清算会社の帳簿を清算結了の登記から10年間保存する義務があります(会社法508条)。
ただし、利害関係人に帳簿閲覧権はないと解されています(最判H16.10.4)。

最判H16.10.4 清算結了した株式会社の利害関係人は,帳簿及び重要な資料の閲覧又は謄写の請求をすることはできないとした判例

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甲社は解散し、Yがその清算人に就任し、清算が結了しました。Yは、商法429条後段の規定に基づき、裁判所により、甲社の帳簿並びにその営業及び清算に関する重要な資料の保存者に選任されました。甲社の株主であったXが、Yに対し、商法429条の規定に基づき保管帳簿等の閲覧及び謄写を求めるなどの請求をしたところ、第1審、控訴審ともXの請求を認めたためYが上告したところ、本判決は以下のように説示し、原判決を取り消し、Xの請求を棄却しましたた。
「商法429条は、その前段において、解散した株式会社の帳簿・重要資料を清算結了の登記をした後10年間保存することを要する旨を定め、その後段において、その保存者は、清算人その他の利害関係人の請求により裁判所が選任する旨を定めている。
 帳簿・重要資料には、商法上作成が義務付けられている会計帳簿等はもとより、確定申告書の控え、株主総会議事録、取締役会議事録、更には、営業、清算に関し授受をした信書又はその控え等に至るまで、営業及び清算に関する重要資料全般が含まれるが、同条は、当該株式会社の清算に関して後日紛争が生じた場合等に備え、これらの資料を一定期間証拠資料として保存する義務を保存者に課したものと解される。商法は、帳簿・重要資料に含まれる株式会社の会計帳簿等については、一定期間の保存義務を課すとともに(36条)、総株主の議決権の100分の3以上を有する株主に限り、理由を付した書面により閲覧又は謄写の請求をすることができるものとし(293条ノ6)、当該株式会社が、この請求を拒否し得る場合についても明確に定めている(293条ノ7)。また、株主総会議事録、取締役会議事録についても、その閲覧又は謄写の請求については、備置き義務を定めた規定とは別に、請求者の範囲、その要件等を定めた規定が置かれている(244条6項において準用する263条3項、260条ノ4第6項)。そして、当該株式会社が解散した後においても、同法430条2項の規定により、上記各規定が清算人に準用され、清算中における会計帳簿等の閲覧又は謄写の請求について、解散前と同様の制約が定められている。
 上記のとおり、商法は、帳簿・重要資料に含まれる上記資料の閲覧又は謄写の請求については、当該株式会社の解散の前後を問わず、保存義務や備置き義務を定めた規定とは別に、対象となる資料の種類に応じて、請求者の範囲、その要件等を定めた規定を置いている。ところが、清算結了後の帳簿・重要資料の保存義務を定めた同法429条の規定は、前記のとおり、上記保存義務と保存者の選任について規定しているだけで、その閲覧又は謄写の請求について規定するところがなく、また、同法430条2項のような準用規定もない。このことと、上記の帳簿・重要資料には、会計帳簿等はもとより、営業及び清算に関する重要資料全般が含まれ、これらの資料の中には、当該株式会社又は第三者の営業秘密等の清算結了後においても秘匿することを要する情報が記載された資料が存在し得ること等にかんがみると、商法は、清算結了後の株式会社の帳簿・重要資料についての閲覧又は謄写の請求については、これを認めていないものと解するのが相当である。
 したがって、清算の結了した株式会社の利害関係人は、商法429条の規定に基づき、同条後段所定の保存者に対し、帳簿・重要資料の閲覧又は謄写の請求をすることはできないものというべきである。」