このページは特別清算における、清算会社の債権者による相殺の禁止及びその例外について(会社法517条)を説明しています。

清算会社の債権者は、原則として相殺が可能ですが(民法505条)、相殺が禁止される場合があります(会社法517条1項)。さらに、相殺禁止の例外もあります(会社法517条2項)。

1 原則

特別清算手続開始決定時に相殺適状にあれば、清算会社の債権者は原則として、相殺が可能です(民法505条)。

2 会社法517条1項(相殺禁止の原則)

会社法517条は、債権者が、特別清算手続開始後等に清算会社に対する債務を負担した場合の相殺を禁止する旨を定めるものです。

⑴ 債権者による相殺禁止の規律(まとめ)

会社法517条1項各号は、債権者が、危機時期以降に清算会社に対して債務を負担した場合の相殺禁止を規定しています。

号番号債務負担の時期債務負担の態様債権者の主観裁判例
2号支払不能清算会社の財産処分や他の債務の引受・専ら相殺に供する目的
支払不能について悪意
支払不能の意義について、は参照
3号支払停止 ・支払停止について悪意(支払不能でない場合を除く)支払停止の意義については参照
支払停止についての悪意の時期について大阪地判H30.11.15があります。
4号申立後 申立について悪意 
1号開始決定後   最判H17.1.17

最判H17.1.17(破産):破産債権者は、受働債権が期限付及び停止条件付債権であっても、特段の事情がない限り相殺することが許されるとした判例

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甲の破産管財人Xが保険会社Yに対して開始決定後に満期が到来した満期返戻金返及び、開始決定後の解約により停止条件が成就した保険解約返戻金を請求したのに対し、Yが、甲に対する不法行為(甲の放火による保険金の詐取)に基づく損害賠償請求権による相殺を主張して、支払を拒みました。 第1審はXの請求を認容し、控訴審はYの相殺を認めたため、Xが上告したが、本判決は、「破産債権者は、その債務が破産宣告の時において期限付である場合には、特段の事情のない限り、期限の利益を放棄したときだけでなく、破産宣告後にその期限が到来したときにも、法99条後段の規定により、その債務に対応する債権を受働債権とし、破産債権を自働債権として相殺をすることができる。また、その債務が破産宣告の時において停止条件付である場合には、停止条件不成就の利益を放棄したときだけでなく、破産宣告後に停止条件が成就したときにも、同様に相殺をすることができる。」として、上告を棄却しました。

大阪地判H30.11.15(破産):支払停止について悪意になった時期につき、支払停止通知確認の状況を慎重に判断した裁判例

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破産申立予定である旨の甲社の代理人弁護士Aの受任通知が、Y銀行の郵便受けに土曜日に投函されました。Y銀行が、翌月曜日の午前9時04分までにYの甲社の口座に振込入金された預金に対して相殺の意思表示をしたことから、甲社の破産管財人XがYに対して相殺は無効であるとして争いました。本判決は「本件受任通知が土曜日である同年9月30日にYのB支店の郵便受けに投函されたからといって、直ちにYが本件受任通知の存在及びその内容を認識したとはいえない。加えて、現にB支店が月曜日である同年10月2日に本件受任通知の封筒に受付印を押印していることからしても、月曜日まで本件受任通知の存在及びその内容を認識していなかったとするYの上記主張内容には合理性が認められる。」「本件各振込入金のうち最も遅い入金時刻は同日午前9時04分であるが、Y主張の処理態勢に照らせば、YのB支店の郵便物の受領、開封等の業務を一次的に担当する行員においてさえ、同時点までに本件受任通知の存在及びその内容を認識したとは認め難いところ、当該処理態勢が特に不自然、不合理といえないことは上記のとおりである。」として、Yは悪意とでないとして、相殺を認めました。

⑵ 支払不能とは

支払不能とは「清算会社が支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態」をいいます(会社法517条1項2号)。
定義から明らかですが、弁済期未到来のものについて弁済ができない可能性があっても支払不能とはいえません(東京地判H19.3.29,東京地判22.7.8)。

裁判例説示内容
 東京地判H19.3.29(破産)/東京地判H22.7.8(破産) 支払不能であるか否かは、弁済期の到来した債務について判断すべきであり、弁済期未到来の債務を将来弁済することができないことが確実に予想されたとしても、弁済期の到来した債務を現在支払っている限り、支払不能ということはできないとしました。
大阪地判H22.3.15(民事再生)任意整理が先行している場合、任意整理が開始していることが「支払不能」にあたると解されるとした裁判例

⑶ 支払停止とは

「支払停止」とは支払不全を外部に表示する債務者の行為です(最判S60.2.14など)
支払停止が債務者の行為であるのに対し、支払不能は客観的な状態を指します。

最判S60.2.14(破産) 弁護士と相談をして破産申立の方針を決めただけでは、支払停止とはいえないとした判例

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甲は、Yから融資を受け、その担保に抵当権設定仮登記の原因たる契約を締結していたところ、資金繰りに窮し、弁護士Aに相談のうえ、破産を申立てる方針を決めた。甲がAに相談した直後に、Yは、甲を訪ね、登記手続きに必要な書類を受け取り、甲が破産手続開始を申立てた日に、仮登記手続を終了しました。
甲の破産管財人に選任されたXは、Yの行った仮登記を否認し、Yに対し、否認登記手続を求める訴えを提起したところ、第1審はXの請求を棄却、控訴審はXの請求を認容したため、Yが上告しました。 本判決は、「破産法74条1項『支払ノ停止』とは、債務者が資力欠乏のため債務の支払をすることができないと考えてその旨を明示的又は黙示的に外部に表示する行為をいうものと解すべきところ、債務者が債務整理の方法等について債務者から相談を受けた弁護士との間で破産申立の方針を決めただけでは、他に特段の事情のない限り、いまだ内部的に支払停止の方針を決めたにとどまり、債務の支払をすることができない旨を外部に表示する行為をしたとすることはできないものというべきである。」として、破棄差し戻しとした。

高松高判H22.9.28(破産) 破産会社代表者の倒産を示唆する発言は、支払停止とはいえないとした裁判例

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マンション建設・販売業者甲社の破産管財人Xが、甲所有不動産に抵当権を設定していた破産債権者Yが申立てた競売申立事件において、甲社の代表者が倒産を示唆する発言をYに対して行っていたことが支払停止にあたると主張して抵当権設定行為に対し否認権を行使し、配当表異議訴訟を提起しました。本判決は「破産会社代表者の倒産を示唆する発言があったとしても、本件全証拠に照らしても、それは所詮は、個人的な弱音を吐いた域を超えるものとまでは認められず、破産会社が、弁済能力の欠乏のために弁済期が到来した債務を一般的かつ継続的に弁済することが出来ない旨を外部に表示したものとまでは認められない。」とした。

最判二小H24.10.19(破産) 給与所得者の破産において、代理人弁護士の債務整理開始通知が「支払停止」にあたるとした判例。なお、本判例には、須藤正彦裁判官の補足意見が付されています。

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東京都の職員である甲が債務整理を委任した弁護士らは甲の代理人として、Yを含む甲の債権者一般に対し、「当職らは、この度、後記債務者から依頼を受け、同人の債務整理の任に当たることになりました。」、「今後、債務者や家族、保証人への連絡や取立行為は中止願います。」などと記載された債務整理開始通知を出したが、甲の債務に関する具体的な内容や債務整理の方針、さらには自己破産の申立てにつき受任した旨も記載されていませんでした。その後、甲がYに対し、合計17万円の債務を弁済した後、甲は破産手続開始決定を受け、管財人に選任されたXが、否認権を行使し、Yに対して弁済金相当額の支払いを求めて提訴しました。
第1審はXの請求を認めましたが、控訴審がXの請求を棄却したため、Xが上告しました。
本判決は「破産法162条1項1号イ及び3項にいう『支払の停止』とは、債務者が、支払能力を欠くために一般的かつ継続的に債務の支払をすることができないと考えて、その旨を明示的又は黙示的に外部に表示する行為をいうものと解される(最高裁昭和59年(オ)第467号同60年2月14日第一小法廷判決・裁判集民事144号109頁参照)。これを本件についてみると、本件通知には、債務者である甲が、自らの債務の支払の猶予又は減免等についての事務である債務整理を、法律事務の専門家である弁護士らに委任した旨の記載がされており、また、甲の代理人である当該弁護士らが、債権者一般に宛てて債務者等への連絡及び取立て行為の中止を求めるなど甲の債務につき統一的かつ公平な弁済を図ろうとしている旨をうかがわせる記載がされていたというのである。そして、甲が単なる給与所得者であり広く事業を営む者ではないという本件の事情を考慮すると、上記各記載のある本件通知には、甲が自己破産を予定している旨が明示されていなくても、甲が支払能力を欠くために一般的かつ継続的に債務の支払をすることができないことが、少なくとも黙示的に外部に表示されているとみるのが相当である。そうすると、甲の代理人である本件弁護士らが債権者一般に対して本件通知を送付した行為は、破産法162条1項1号イ及び3項にいう『支払の停止』に当たるというべきである。」としてXの請求を認める破棄自判をしました。
須藤裁判官の補足意見を見る
一定規模以上の企業、特に、多額の債務を負い経営難に陥ったが、有用な経営資源があるなどの理由により、再建計画が策定され窮境の解消が図られるような債務整理の場合において、金融機関等に『一時停止』の通知等がされたりするときは、『支払の停止』の肯定には慎重さが要求されよう。このようなときは、合理的で実現可能性が高く、金融機関等との間で合意に達する蓋然性が高い再建計画が策定、提示されて、これに基づく弁済が予定され、したがって、一般的かつ継続的に債務の支払をすることができないとはいえないことも少なくないからである。たやすく『支払の停止』が認められると、運転資金等の追加融資をした後に随時弁済を受けたことが否定されるおそれがあることになり、追加融資も差し控えられ、結局再建の途が閉ざされることにもなりかねない。反面、再建計画が、合理性あるいは実現可能性が到底認められないような場合には、むしろ、倒産必至であることを表示したものといえ、後日の否認や相殺禁止による公平な処理という見地からしても、一般的かつ継続的に債務の支払をすることができない旨を表示したものとみる余地もあるのではないかと思われる。このように、一定規模以上の企業の私的整理のような場合の『支払の停止』については、一概に決め難い事情がある。」

3 会社法517条2項(相殺禁止の例外)

⑴ 会社法517条2項(相殺禁止の例外)

会社法517条1項に基づき、相殺が禁止される場合であっても、同項2号から4号まで(=特別清算開始後以外)については、受働債権(=債権者にとっての債務)が以下の場合には相殺が許されます。

号番号内容例/補足(裁判例)
1号「法定の原因」に基づく債務負担・相続(遺産分割協議などが行われた場合など、意思が介在する場合が含まれるかは争いがあります)
・事務管理
・合併(ただし、争いがあります)
など
2号支払不能等につき債権者が知った時より「前に生じた原因」に基づく債務負担・開始決定前の手形取立金による相殺は許されますが、開始決定後の手形取立金の引渡債務に基づく相殺は許されません(最判S63.10.18)。なお、手形に商事留置権が成立する場合は、商事留置権の効果として弁済充当が許されます(最判H10.7.14、最判H23.12.15)。
・普通預金契約の締結は「前に生じた原因」にあたりません(最判S60.2.26)。
・銀行、清算会社および第三者との間の振込指定合意は、「前に生じた原因」にあたると解されます(名古屋高判S58.3.31)。
・清算会社が、銀行に第三者からの弁済について代理受領権を与える合意は「前に生じた原因」にあたると解されます。
3号 「特別清算開始の申立てがあった時より1年以上前に生じた原因」に基づく債務負担 

⑵ 会社法517条2項(相殺禁止の例外)に関する裁判例

最判S63.10.18取立委任手形を破産手続開始前に取り立てていた場合、手形取立金の引渡債務による相殺が許されるなどとした判例

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信用金庫Yと取引をしていたA(自動車部品の販売業)の破産管財人に選任されたXが、Yに対して、Aが取立委任のためにYに裏書交付していた手形につき、取立の終了した甲手形については取立金を、また取立未了の乙手形については手形そのものを返還するように求めたにもかかわらず、Yは信用金庫取引約定書4条に基づき取立金をYのAに対する債権の弁済に充当した。なお、信用金庫取引約定4条(「担保」)は、概要以下の内容であった。
1項:Yに現在差し入れている担保及び将来差し入れる担保は、全てその担保する債務のほか、現在及び将来負担す   る一切の債務を共通に担保するものとする。
2項:Aは、債権保全のため必要と認められるときは、請求によって直ちにYの承認する担保若しくは増担保を差し入れ又は保証人を立て若しくはこれを追加する。
3項:担保は、必ずしも法定の手続によらず一般に適当と認められる方法、時期、価格等により貴金庫において取立て又は処分のうえ、その取得金から諸費用を差し引いた残額を法定の順序にかかわらず債務の弁済に充当されてもAは異議を述べない。
4項:AがYに対する債務を履行しなかった場合には、Yが占有しているAの手形はYにおいて取立て又は処分することができ、その取得金から諸費用を差し引いた残額を法定の順序にかかわらず債務の弁済に充当できる。
そこで、XがYに対して,Aの破産手続開始決定前に取り立てた甲手形の手形金については準委任契約に基づく受任者たるYの受取物引渡義務(民法646条・656条)により、また破産手続開始決定後に取り立てた乙手形の手形金については委任者たる甲の破産によって準委任契約が終了し(民法653条)、右各手形の管理、処分権が破産管財人Xに専属するに至ったので、Yが右各手形金を取立てずに右各手形そのものをXに引き渡すべきであるにもかかわらず、これを取り立てて取得しているので、不当利得の返還義務により、いずれもXに支払うべき義務があるとして、支払いを求めて提訴しました。
第1審、控訴審ともXの請求を認容したため、Yが上告したところ、以下のとおり原判決を破棄し、破産手続開始決定後に取り立てた乙手形の手形金については、Xに支払うべきとしたが、破産手続開始決定前に取り立てた甲手形の手形金については相殺ができるとした(なお、商事留置権等も論点となっているので、その点も紹介する)。
商事留置権の成否について
「信用金庫法に基づいて設立された信用金庫は、国民大衆のために金融の円滑を図り、その貯蓄の増強に資するために設けられた協同組織による金融機関であり、その行うことのできる業務の範囲は次第に拡大されてきているものの、それにより右の性格に変更を来しているとはいえず、信用金庫の行う業務は営利を目的とするものではないというべきであるから、信用金庫は商法上の商人には当たらないと解するのが相当である・・・。そして、信用金庫の行うことのできる業務の性質が右のとおりである以上、特定の取引行為についてだけ信用金庫が商人に当たると解することもできないというべきである。したがつて、商事留置権の成立を否定した原審の判断は正当として是認することができる。
信用金庫取引約定4条に基づく弁済充当の可否
「そこで、約定書4条4項の趣旨について考えるに、同条1項ないし3項が『担保」との文言を用いて担保の設定、処分に関して定めているのに対し、同条四項が『担保」との文言を用いていないこと、及び同条項の内容等に徴すると、同条項は、信用金庫の取引先がその債務を履行しない場合に、信用金庫に対し、その占有する取引先の動産、手形その他の有価証券を取り立て又は処分する権限及び取立又は処分によつて取得した金員を取引先の債務の弁済に充当する権限を授与したにとどまるものであつて、右手形につき、取引先の債務不履行を停止条件とする譲渡担保権、質権等の担保権を設定する趣旨の定めではなく、取引先が破産した場合には、民法656条、653条の規定により右の権限は消滅すると解するのが相当である。約定書4条の標題が『担保』となつていることは、右判断の妨げとなるものではない。」
相殺の可否について
「原審の右判断は、乙手形については正当として是認することができるが、甲手形については是認することができない。その理由は、次のとおりである。
破産債権者が、支払の停止及び破産の申立のあることを知る前に、破産者との間で、破産者が債務の履行をしなかつたときには破産債権者が占有する破産者の手形等を取り立て又は処分してその取得金を債務の弁済に充当することができる旨の条項を含む取引約定を締結したうえ、破産者から手形の取立を委任されて裏書交付を受け、支払の停止又は破産の申立のあることを知つたのち破産宣告前に右手形を取り立てた場合には、破産債権者が破産者に対して負担した取立金引渡債務は、法104条2号但書にいう「前ニ生ジタル原因」に基づき負担したものに当たると解するのが相当である。けだし、債務者が債権者に対して同種の債権を有する場合には、対立する両債権は相殺ができることにより互いに担保的機能をもち、当事者双方はこれを信頼して取引関係を持続するのであるが、その一方が破産宣告を受けた場合にも無制限に相殺を認めるときは、債権者間の公平・平等な満足を目的とする破産制度の趣旨が没却されることになるので、同号は、本文において破産債権者が支払の停止又は破産の申立のあることを知つて破産者に対して債務を負担した場合に相殺を禁止するとともに、但書において相殺の担保的機能を期待して行われる取引の安全を保護する必要がある場合に相殺を禁止しないこととしているものと解されるところ・・・、破産債権者が前記のような取引約定のもとに破産者から個々の手形につき取立を委任されて裏書交付を受けた場合には、破産債権者が右手形の取立により破産者に対して負担する取立金引渡債務を受働債権として相殺に供することができるという破産債権者の期待は、同号但書の前記の趣旨に照らして保護に値するものというべきだからである。
これを本件についてみるに、原審の確定した前記の事実関係によれば、Aは、本件取引約定に基づき、Aの支払の停止及び同人に対する破産の申立の前である昭和55年1月26日Yに対し、甲手形につき取立を委任して譲渡裏書のうえ交付し、Yは、右支払の停止及び破産の申立ののち破産宣告がされるまでの間に甲手形を取り立て、Aに対して取立金・・・の引渡債務を負担するに至つたというのであるから、右取立金引渡債務は、法104条2号但書にいう「前ニ生ジタル原因」に基づくものに当たるというべきである。・・・次に、原審の確定した前記の事実関係によれば、Aは、Yに対し、乙手形につき取立を委任して譲渡裏書のうえ交付したものであるところ、右の取立委任はAが破産宣告を受けたことにより終了し(民法六五六条、六五三条参照)、Yは破産管財人Xに対して乙手形を返還する義務を負うに至つたと解するのが相当である。そうすると、Yは、取り立てて得た手形金については、不当利得として、破産管財人Xに対し返還すべき債務を負つており、右債務が破産宣告後に生じたものであつて法104条1号に該当することは明らかであるから、Yが右債務を受働債権として相殺することは許されないというべきである。・・・」

最判S60.2.26普通預金契約の締結は「前に生じた原因」にあたらないとした判例

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甲は支払停止後、損害保険契約を解約し、解約返戻金が、甲の債権者である信用金庫Yにある甲名義の普通預金口座に振り込まれた後に、甲は破産手続開始決定を受けました。甲の破産管財人XがYに対し当該保険金相当額につき普通預金からの払戻しの請求をしたのに対し、Yは甲に対する貸付金債権等との相殺を主張して争った。 第1審、控訴審ともXの請求を認容したことからYが上告したところ、本判決は、普通預金契約は、「前に生じた原因」(旧破産法104条2号、現破産法71条2項2号)にあたらないとして上告棄却した。

名古屋高判S58.3.31銀行、破産者および第三者との間の振込指定合意は、「前に生じた原因」にあたるとした裁判例

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銀行Yが甲(破産者)に住宅資金の貸付けをする際、Y・甲・使用者乙間で将来発生する甲の退職金についてYにある甲の預金口座に振込みする旨の合意をしました。甲の破産手続開始決定後、甲は乙を退職をし、Yにある甲名義の預金口座に振り込まれた退職金相当額について、Yは甲に対する債権と相殺をしたため、甲の破産管財人Xが相殺は無効であるとして払戻を求めて提訴したが、第1審、控訴審とも振込合意が「前に生じた原因」に基づく場合にあたり、相殺が許されるとしてXの請求を棄却しました