このページでは事業再建計画書・返済計画書の具体的な内容について、説明をしています。

1 事業再建計画書(返済計画書)に記載すべき事項(まとめ)

⑴ 本文に入れるべき内容

事業再建計画(返済計画書)に記載すべき事項は、概要以下のものになります。

       項目            具体的な主な内容や留意点
会社及び事業の概要 
窮境原因および環境分析 
事業計画の骨子事業リストラ策の内容(例えば以下の内容)
・存続事業と撤退事業の切り分け
・経営体制
・雇用調整スポンサー選定の状況(選定済であれば選定理由)再生スキーム(自主再建か事業譲渡か減増資かなど)の説明上記を踏まえた収益計画(3年~5年)
財産評定及び実態BSの説明金融支援(債務免除)必要額の根拠となります
金融支援の依頼 (弁済計画書)・各債権者毎の債権残高、担保設定状況、非保全額の状況表の作成
・財務リストラ策及び支援要請の具体的内容
・事業計画に基づいた将来キャッシュフロー表の作成及び、当該キャッシュフローに基づく債権放棄額の妥当性の説明
・清算BS(破産した場合のBS)との比較表の作成(法的手続よりも回収率が高いことの説明)
・弁済計画
その他・経営責任
・株主責任
・過去の一定期間の弁済状況や担保設定状況の説明(偏頗弁済等が行われていないことの説明資料)
・担保物件の処理ルールの提示(売却するものとしないものに分けて処理ルールを作成など)

⑵ 主な添付資料

主な添付資料        具体的な内容
現状分析過去(3期分程度)のPL及びBS数値推移表 (財務DDによる修正前のものと、可能であれば修正後のもの)
全体スキーム図スキーム全体をわかりやすく説明した図
事業リストラ説明書事業リストラの内容及び費用
財務リストラ説明書要請すべき財務リストラの内容及び返済スケジュール
損益計画など将来(3年以上が望ましい)の数値計画 (貸借対照表計画は、各勘定科目の推移よりも実質債務超過の解消状況がわかるようにすることが重要)

2 窮境原因及び環境分析/事業計画の骨子について

窮境原因および環境分析は、市場分析同業他社比較なども含めて行うことが本来は必要です。
市場分析を行うためには業界についての詳細な分析が必要です。
また、同業他社比較は同業他社データの取得が必要であるが、容易ではありません。なお、同業データとして個社の有価証券報告書、日経経営指標(日本経済新聞出版社)、中小企業庁が公表している中小企業の財務指標、その他民間の調査会社が公表しているデータなどを利用することが考えられますが、使用にあたっては前提条件の確認などが必要です。
また、市場分析同業他社比較については、個別性が強いため、ここではこれ以上の説明はしません。

会社の財務諸表のみを利用した窮境原因や環境分析の基礎的な方法としては以下のリンク先記載のものがあります。なお、事業内容な商流などによって、利益率も、利益の源泉も異なってくるため、基礎的な考え方のみを記載しています。

また事業計画を作成する上ので留意点も以下のリンク先に記載があります。こちらも事業内容や会社の状況によって異なるため、基礎的な考え方のみを記載しています。

3 財産評定及び実態BSの説明/返済計画書(財務リストラ案)

⑴ 財産評定及び実態BSの説明

財産評定及び実態BSの説明は、実態のBSを作成することで、実際の債務超過額や、金融支援必要額の総額などを把握できるようにするものです。作成には、原則として専門家(公認会計士)の関与が必要になります。
ここでは作成方法などについては触れません。

⑵ 対象債権者別返済計画書

対象債権者別一覧表には、対象債権者及び債権額に加え、担保設定状況一覧非保全額一覧を入れるのが一般的です。具体的な記載内容は以下のとおりです。

項目記載すべき内容
対象債権者毎の債権額一時停止通知時など、一定の時点を決めて、元本・利息に分けて一覧表を作成します。
担保対象物の評価額・割付額担保による保全額については全額を弁済し、非保全額部分をプロラタ(比例按分)で債権放棄を受けることが一般的です。担保による保全額は、回収額に直接に影響するため、保全額の算定方法は重要です。
よって、担保対象物の評価額の根拠資料も添付するほうがいいです。
また一つの担保対象物に複数の担保が設定されていて、割付が論点になる場合には、その根拠資料や計算式なども添付するべきです。
③対象債権者毎の保全額、非保全額を考慮した弁済(予定)額実際の弁済額がわかる内容とします。
担保による保全部分非保全部分で分けて記載するのが一般的です。詳細は以下をご参照ください。

なお、債権カットでなくリスケジュールのみの要請の場合は、特に保全額を考慮することなく、債権額プロラタで弁済額を計算することもあります。
モニタリング方法再建計画成立後の報告内容及び報告タイミングなどについて定めます。
モニタリングの頻度はケースバイケースですが、1年目は月1回、2年目以降は3ヵ月に1回程度会社の業況報告をすることが多いと考えられます。

⑶ ①担保対象物の評価額・割付額⓶対象債権者毎の保全額、非保全額を考慮した弁済(予定)額についての補足

上記⑵の②担保対象物の評価額・割付額は、担保による保全額は、回収額に直接に影響するため、保全額の算定方法は重要です。詳細は、以下のリンク先をご参照下さい。

また、上記の③対象債権者毎の保全額、非保全額を考慮した弁済(予定)額について、記載すべき内容をより詳細にご説明すると以下のとおりです。

担保により保全されているか否かによる区分記載すべき内容
保全部分の弁済方法担保物件を処分して弁済する場合は、以下の点を明示します。
・処分時期、処分方法、処分価格から差し引く費用(わかる範囲で)
・計画案における処分見込額と実際の処分額の差異の処理方法(通常は処分連動方式とし、実際の処分額を優先します)

担保物件を処分しない場合には、弁済スケジュールを明示する。
非保全債権の弁済方法・弁済スケジュール(弁済額、弁済時期)
・追加弁済条項(キャッシュ・フローに余裕がある場合など)
・弁済条件変更手続に関する条項(リスケが必要となった場合の手続条項)
・利息の取り扱い
・遅延損害金の取り扱い
・DES等を依頼する場合はその内容

4 具体的な金融支援要請の種類 

具体的な金融支援要請の種類としては、以下のものがあります。

 種類   留意点など
金利減免金利が高い場合には交渉の余地がありますが、そうでない場合は、通常は要請を行いません。
リスケジュール・元本・利息ともに返済猶予を求める場合と、元本についてのみ猶予を求める場合があります。
・返済時期を調整するだけであり、債務額に変更はありません。
・具体的なリスケジュールの要請としては、非保全額部分のみプロラタでリスケを要請する場合と、残債権全額をプロラタでリスケを要請する場合のいずれもが考えられます。
・保証協会付債権については、追加保証料が必要となりります。
債権放棄・担保等による保全額については全額を弁済し、非保全額部分をプロラタ(比例按分)で債権放棄を受けることが一般的です。
・金融機関の同意を得られるハードルは、リスケジュールに比べて相当に高くなります。
DES・債務の株式化です。
・非上場株式会社の場合、DESに応じてもらえる可能性はかなり低く、事例はあまり無いと推察されます。
・DESについての手続や発行株式の内容などについては、以下のリンク先をご確認ください。

DESについての詳細はこちらをご確認下さい
DDS・債務を劣後化することにより、財務状況を改善する方法です。
・債務のまま残るので、債権放棄やDESのような劇的な効果はありませんが、その分、金融機関としても応諾しやすい方法です。債権放棄やDESが必要な状況にまで陥っていない反面、リスケジュールのみでは資金繰りの改善が困難な場合などに利用されます。
・条件を決めたうえで、既存の債権を劣後化する内容の契約(変更契約ないし準消費契約)を債務者と債権者の間で締結する方法で行われます。あわせて、他の債権者との間で劣後化することを確認する内容の契約を締結します。