このページでは私的整理におけるDD(デューデリジェンス)の具体的な内容などについて、説明をしています。
私的整理においては、まず自己分析(現状把握)をすることが重要です。そのための作業がDD(デューデリジェンス)です。必ずしも専門家を利用する必要はありませんが、①専門的な知見に基づく調査のほうが現状分析に適していること、⓶専門家によるDDのほうが金融機関の理解を得やすいことなどから、費用はかかるものの専門家に依頼することが一般的です。手続によってはDD費用にも補助金が利用できます。
1 DDの主な目的
DDの目的としては、一言で言えば、現状分析ですが、もう少しかみ砕くと大きく4点が挙げられます。
⑴ 財産評定→実態BSの作成及び実質債務超過額の把握
財産評定をする際の評価基準(処分価格で評価するか継続企業価値で評価するか)が問題となりますが、実態BSは継続企業価値とするのが一般的と考える。
実態BSを作成する際の各勘定科目の評価基準は、各手続おいて以下のように基準が定められています。内容は概ね同様です。
手続の種類 | 財産評定基準 |
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私的整理ガイドライン | 私的整理に関するガイドラインQ&A QA10 |
事業再生ADR | 経済産業省関係産業競争力強化法施行規則第㉙条第1項第1号の資産評定に関する基準 |
RCCスキーム | RCC企業再生スキーム別紙5の再生計画における「資産・負債の評価基準」 |
⑵(必要に応じて) 清算BSの作成
破産(可能であれば、民事再生)の場合の配当率算出。
この場合の清算BSを作成する際の各勘定科目の評価基準は処分価値で行うのが一般です。
⑶ 対象債権者の担保保全額、非保全の把握及び、担保対象物の処理方針の決定
対象債権者と交渉するにあたり、担保により保全されている額及び非保全額を把握する必要がありますので、こちらも必要です。さらに、担保付物件については、継続使用が必要か売却処理をするのかについて検討し、その処理方針を決めておくことが必要です。処理方針に関する留意点は、以下のとおりです。
分類 | 処理方針に関する留意点 |
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担保物件を継続使用する必要がある場合 | 担保権者と個別に弁済方法等につき協定を締結する必要がありますが、担保評価について、不平等が発生しないように注意をする必要があります。 例えば、不動産であれば、必要な範囲で不動産鑑定士に鑑定を依頼するなどして、公平性を維持できるように配慮する必要がある。 |
担保物件を継続使用せず、処分する場合 | 換価方法、換価した場合の条件(一定割合の債務者財産への組み入れ条件など)について、やはり債権者平等の観点からルールを提示しておくべきものと考えられます |
⑷ PL分析・事業リストラ策及びリストラ費用の把握
事業再建のために、現状把握及び、事業リストラ策、リストラ費用を把握する必要があります。
発生することが多いリストラ費用としては、従業員の退職金の支払いや、不動産売却にあたっての諸費用、転居費用などがあります。
2 具体的なDDの進め方
⑴ PL分析(事業DD)
主に会計士ないしコンサルに依頼する部分です。
窮境原因の追究、市場分析、収益力の分析、管理会計による事業部門毎、事業所毎の収益分析などが行われます。
成果物としては、収益改善策がメインになりますが、事業リストラ策の検討・リストラ費用の算出などにも役に立ちます。
⑵ BS分析(財務DD)
主に会計士ないしコンサルに依頼する部分です。
財産評定、実態BSの作成、(必要に応じて)清算BS(実質債務超過額、破産配当率の算出)の作成が行われます。
財務リストラ案(金融支援の内容、その妥当性)の根拠資料となります。金融機関交渉上は重要な資料です。
⑶ 対象債権者分析
会社担当者で対応できる部分ですが、必要に応じて不動産鑑定士に鑑定を依頼することもあります。また特殊な担保が設定されている場合には、評価会社に依頼することもあります。
債権残高確認、担保評価額(必要に応じて不動産鑑定評価の取得)、担保割付による非保全額の確認が行われます。
全体スキームを検討する上で重要です。処分すべき資産等を決める際の参考にもなります。
⑷ 法務DD/税務DD
弁護士、税理士に依頼することが一般的です。
スキームを検討するうえでの法務・税務リスクの確認、潜在的法務・税務リスクの確認、債務免除を受ける場合には、債務免除益に対する課税対応の検討などを行います。
全体スキームを検討するうえで必要になります。