このページでは経営不振子会社等に対する支援の税務上の扱いについて、整理をしています。

ここでは国税庁のホームページに記載されている内容を紹介します。国税上のホームページは以下のリンク先になります。トップページになりますので、当該ページの右上の検索欄に、通達番号を入れるなどして該当ページに移動して頂ければと思います。主要な部分は以下でも引用して載せています。なお引用は2022年7月時点のものを引用しています。
なお通達は、トップページ→「法令等」→「法令通達解釈」→「法人税関係」→基本通達の「法人税法」にあります。寄附金関係は第9章の第4節です。

1 関連する基本通達の確認

⑴ 法人税基本通達9-4-1について

法人税基本通達9-4-1(子会社等を整理する場合の損失負担等)として以下のように定めています。以下注も含めて、国税庁ホームページからの引用です。ただし、太文字や下線は管理人がつけています。

法人がその子会社等の解散、経営権の譲渡等に伴い当該子会社等のために債務の引受けその他の損失負担又は債権放棄等(以下9-4-1において「損失負担等」という。)をした場合において、その損失負担等をしなければ今後より大きな損失を蒙ることになることが社会通念上明らかであると認められるためやむを得ずその損失負担等をするに至った等そのことについて相当な理由があると認められるときは、その損失負担等により供与する経済的利益の額は、寄附金の額に該当しないものとする。(昭55年直法2-8「三十三」により追加、平10年課法2-6により改正)

(注) 子会社等には、当該法人と資本関係を有する者のほか、取引関係、人的関係、資金関係等において事業関連性を有する者が含まれる(以下9-4-2において同じ。)。

⑵ 法人税基本通達9-4-2

法人税基本通達9-4-2は(子会社等を再建する場合の無利息貸付け等)として以下のように定めています。以下、注も含めて国税庁ホームページからの引用です。ただし、太文字や下線は管理人がつけています。

法人がその子会社等に対して金銭の無償若しくは通常の利率よりも低い利率での貸付け又は債権放棄等(以下9-4-2において「無利息貸付け等」という。)をした場合において、その無利息貸付け等が例えば業績不振の子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行われるもので合理的な再建計画に基づくものである等その無利息貸付け等をしたことについて相当な理由があると認められるときは、その無利息貸付け等により供与する経済的利益の額は、寄附金の額に該当しないものとする。(昭55年直法2-8「三十三」により追加、平10年課法2-6により改正)

(注) 合理的な再建計画かどうかについては、支援額の合理性、支援者による再建管理の有無、支援者の範囲の相当性及び支援割合の合理性等について、個々の事例に応じ、総合的に判断するのであるが、例えば、利害の対立する複数の支援者の合意により策定されたものと認められる再建計画は、原則として、合理的なものと取り扱う。

2 関連情報について

上記の内容では漠然としていて、よくわからないかと思われます。国税庁のホームページにはさらに情報がありますので、ポイントだけ国税庁ホームページから引用します。以下注も含めて、国税庁ホームページからの引用です。ただし、太文字や下線は管理人がつけています。

詳しくは国税庁のホームページの以下の部分をご参照下さい。
トップページ→「法令等」→「質疑応答事例」→「法人税」→「子会社等を整理・再建する場合の損失負担等

⑴ 子会社等が経営危機に陥っている場合とは

照会要旨 経営危機に陥っていない子会社等に対して支援を行った場合、法人税法上どのように取り扱われるのでしょうか。また、子会社等が経営危機に陥っているとは、どのような状況をいうのでしょうか。

回答要旨 経営危機に陥っていない子会社等に対する経済的利益の供与は、その利益供与について緊急性がなく、やむを得ず行うものとは認められませんから、寄附金に該当することとなります。
子会社等が経営危機に陥っている場合とは、一般的には、子会社等が債務超過の状態にあることなどから資金繰りが逼迫しているような場合が考えられます。なお、債務超過等の状態にあっても子会社等が自力で再建することが可能であると認められる場合には、その支援は経済合理性を有していないものと考えられます。
子会社等の整理に当たり、整理損失が生じる子会社等は、一般的に実質債務超過にあるものと考えられます。

⑵ 債務超過でない債務者に対して債権放棄等をした場合でも、経済合理性を有すると認められる場合とは

照会要旨 債務超過の状態にない債務者に対して債権放棄等をした場合でも、寄附金課税を受けない場合はあるのでしょうか。

回答要旨 一般的に、債務超過でない債務者に対して債権放棄等をした場合でも、営業状態や債権放棄等に至った事情等からみて経済合理性を有すると認められる場合には、債権放棄等による経済的利益の供与の額は、寄附金に該当しないものとして法人税法上損金算入が認められます。
 例えば、実質的に債務超過でない子会社等の再建等に際して債権放棄等を行う場合としては、次のような場合などが考えられます。
1 営業を行うために必要な登録、認可、許可等の条件として法令等において一定の財産的基礎を満たすこととされている業種にあっては、仮に赤字決算等のままでは登録等が取り消され、営業の継続が不可能となり倒産に至ることとなるが、これを回避するために財務体質の改善が必要な場合
2 営業譲渡等による子会社等の整理等に際して、譲受者側等から赤字の圧縮を強く求められている場合
なお、財務諸表上は債務超過でないが資産に多額の含み損があり実質的な債務超過によって経営危機に陥っている子会社等に対して、合理的な再建計画に基づいてやむを得ず債権放棄等を行ったといったような場合は、経済合理性を有することはいうまでもありません。

⑶ 合理的な整理計画又は再建計画とは

照会要旨 子会社等を整理又は再建する場合の損失負担等が経済合理性を有しているか否かはどのように検討するのでしょうか(合理的な整理計画又は再建計画とはどのようなものをいうのでしょうか。)。

回答要旨 子会社等を整理又は再建する場合の損失負担等については、その損失負担等に経済合理性がある場合には寄附金に該当しませんが、この経済合理性を有しているか否かの判断は、次のような点について、総合的に検討することとなります。
1 損失負担等を受ける者は、「子会社等」に該当するか。
2 子会社等は経営危機に陥っているか(倒産の危機にあるか)。
3 損失負担等を行うことは相当か(支援者にとって相当な理由はあるか)。
4 損失負担等の額(支援額)は合理的であるか(過剰支援になっていないか)。
5 整理・再建管理はなされているか(その後の子会社等の立ち直り状況に応じて支援額を見直すこととされているか)。
6 損失負担等をする支援者の範囲は相当であるか(特定の債権者等が意図的に加わっていないなどの恣意性がないか)。
7 損失負担等の額の割合は合理的であるか(特定の債権者だけが不当に負担を重くし又は免れていないか)。
(注) 子会社等を整理する場合の損失負担等(法人税基本通達9-4-1)の経済合理性の判断の留意点
・上記2については、倒産の危機に至らないまでも経営成績が悪いなど、放置した場合には今後より大きな損失を蒙ることが社会通念上明らかであるかどうかを検討することになります。
・上記5については、子会社等の整理の場合には、一般的にその必要はありませんが、整理に長期間を要するときは、その整理計画の実施状況の管理を行うこととしているかどうかを検討することになります。

⑷ 支援額の合理性はどのように考えるか

照会要旨 損失負担(支援)額の合理性は、どのように検討するのでしょうか。

回答要旨 損失負担(支援)額が合理的に算定されているか否かは、次のような点から検討することとなります。
1 損失負担(支援)額が、子会社等を整理するため又は経営危機を回避し再建するための必要最低限の金額とされているか。
2  子会社等の財務内容、営業状況の見通し等及び自己努力を加味したものとなっているか。
 子会社等を再建又は整理するための損失負担等は、子会社等の倒産を防止する等のためにやむを得ず行われるものですから、損失負担(支援)額は、必要最低限の金額でなければなりません。一般的に、支援により子会社等に課税所得が発生するようなケースは少ないと考えられます。
 支援金額が過剰と認められる場合には、単なる利益移転とみなされ、寄附金課税の対象となります。
 なお、支援の方法としては、無利息貸付、低利貸付、債権放棄、経費負担、資金贈与、債務引受けなどがあり、その実態に応じた方法が採用されることとなるものと考えられます。
 更に必要最低限の支援であり、子会社等はそれなりの自己努力を行っていることが通例ですから、損失負担(支援)額は、被支援者等の自己努力を加味した金額となります。
 この場合、どのような自己努力を行うかは、法人の経営判断ですが、一般的に遊休資産の売却、経費の節減、増減資等が考えられます。

⑸ 親会社による再建管理が必要とされています。

照会要旨 支援者による再建管理等は、なぜ必要なのでしょうか。また、再建管理の方法には、どのようなものがあるのでしょうか。

回答要旨 子会社等の再建を図るためにやむを得ず行う支援である以上、損失負担(支援)額は、必要最低限のものでなければなりません。
 このため、支援者が子会社等の再建状況を把握し、例えば、再建計画の進行に従い、計画よりも順調に再建が進んだような場合には計画期間の経過前でも支援を打ち切る(逆の場合には、追加支援を行うための計画の見直しを行う)などの手当て(再建管理)が必要となります。
 なお、再建管理の方法としては、例えば、支援者から役員を派遣すること又は子会社等から支援者に対して毎年(毎四半期、毎月)再建状況を報告させるなどの方法が考えられます。
 一般的に子会社等の整理は、解散後速やかに行われますから、整理計画の実施状況に関する管理については、検討を要しないものと考えられます。
 しかしながら、資産処分に時間を要するなどの理由から、整理計画が長期間にわたる場合には、整理計画の実施状況に関する管理が的確に行われるか否かを検討する必要があります。

⑹ 経営権の譲渡に伴う債権放棄による経済的利益の供与について

照会要旨 A社及びA社グループは、経営不振により倒産の危機にある子会社において、金融機関の追加融資が困難な状況にあって、かつ、A社も長期化する不況により資金援助ができない状況にあることから、その子会社を解散することとしました。
 ところが、甲銀行が幹事となりA社グループとともに、整理又は再建の方策を検討した結果、子会社の解散は社会的影響が大きいことから、B社にその経営権を譲渡することとしました。ただし、その経営権の譲渡に当たっては、子会社の欠損金をA社が補てんすることが条件とされていますので、A社が子会社に対して有する債権を放棄することになりますが、この債権放棄は税務上どのように取り扱われますか。

回答要旨 経営権の譲渡に伴う債権放棄による経済的利益の供与は、寄附金ではなく単純損金として認められます。
(理由)
 他の企業に経営権を譲渡するような場合、譲受法人としては、その譲受け後における子会社の経営上の責任を考えて、赤字をできるだけ圧縮した上でなければ、譲渡に応じられないという条件を提示することは十分にありうることです。このため、やむを得ず子会社に対する貸付金等の一部を切り捨てたり、新たに資金を投入するなどしてある程度子会社の財政面を改善した上で譲渡するといった事例が見受けられます。
 このような貸付金等の切捨てや資金の援助については、親会社として今後発生するであろうより大きな損失を回避するためにやむを得ず行う損失の負担であると認められる場合が少なくありませんので、この損失負担を一概に単純な贈与と決めつけることは適当ではなく、常に寄附金として取り扱うことは実態に即したものとはいえないと考えられます。
 したがって、A社が子会社の経営権の譲渡に伴い、やむを得ず債権の放棄等の損失を負担した場合に、それが今後より大きな損失の生ずることを回避するために行われたものであり、かつ、そのことが社会通念上も妥当なものとして認められるような事情にある場合には、税務上もその債権放棄は寄附金として取り扱わないことが適当と考えられます。

⑺ 子会社等を他の法人に営業譲渡等するために親会社の責任として損失を負担する場合に検討すべき点とは

照会要旨 経営が破綻した子会社等を他の法人に営業譲渡又は合併するために親会社の責任として損失を負担しなければその目的を達成できない場合があります。このような場合、その損失を負担することに相当な理由があるか否かの判断に当たって、どのような点を検討することとなるのでしょうか。

回答要旨 営業譲渡や合併により支援者が損失負担等を行う場合には、そのことに相当な理由があるか否かの判断に当たって、次のような点を検討する必要があります。
(1) 支援者にとって破綻した子会社等の事業を継続する必要性があること(例えば、経営が破綻した地域販売子会社の保有する販路を維持する必要がある場合など)
(2) 子会社等の事業を継続するために営業譲渡若しくは合併によらざるを得ないこと又は営業譲渡若しくは合併を選択したことにつき経済合理性(例えば、経営が破綻した子会社等を清算したり、そのまま存続させ再建を図った場合よりも損失負担額が少ないなど)が認められること