このページでは特定調停を利用した私的整理の手続の流れなどについて、説明をしています。特定調停を利用した私的整理は2つあります。

1つは、日本弁護士連合会が公表しているもので、事前調整終了後簡易裁判所への申立を想定しています。

もう1つは、事業再生ADRや中小企業活性化協議会などの準則型私的整理手続において、ほとんど債権者が賛成していたもかかわらず一部の債権者の反対で私的整理が成立しない案件を想定しているもので、企業の私的整理に関する特定調停と呼ばれているものです。

1 特定調停手続を利用した私的整理手続の特徴

⑴ はじめに

対象債権者全員の合意が概ね成立した段階で、手続の公正を期すためや税務上の処理に明快性をもたせるため、特定調停を利用する方法です。特定調停の申立前に概ね債権者と同意できていることを前提とします。

税務上の扱いについては、以下の国税庁のサイト(トップページ)→法令等→文書回答事例→法人税(項目別)→「特定調停による債権放棄等」及び、国税庁のサイト(トップページ)→法令等→質疑応答事例→法人税→「特定調停による債権放棄等」に載っていますので、必要に応じてご参照下さい。国税庁のサイト(トップ)は以下のリンク先になります。

⑵ 種類

大きく2つの種類ががあります。

1つは、日本弁護士連合会が公表しているもので、事前調整終了後簡易裁判所への申立を想定しています。
日本弁護士連合会のホームページ→私たちの活動→利用しやすい司法の実現→中小企業への法律支援(日弁連中小企業法律支援センター)→特定調停スキーム利用の手引(改訂版)をご活用ください、に詳細があります。

もう1つは、事業再生ADRや中小企業活性化協議会などの準則型私的整理手続において、ほとんど債権者が賛成していたもかかわらず一部の債権者の反対で私的整理が成立しない案件を想定しているもので、地方裁判所への申立を想定しています企業の私的整理に関する特定調停と呼ばれているものです。

⑶ 特定調停が通常の民事調停手続と異なる点

  項目   内   容
債務額の確認手続がある当事者は、調停委員会に対し、債権又は債務の発生原因及び内容、弁済等による債権又は債務の内容の変更及び担保関係の変更等に関する事実を明らかにしなければなりません(特調法10条)。
民事執行手続等の停止を命ずる手続が準備されている執行停止処分裁判所は、特定調停によって解決することが相当であると認める場合において、特定調停の成立を不能にし若しくは著しく困難にするおそれがあるとき、又は特定調停の円滑な進行を妨げるおそれがあるときは、申立てにより、特定調停が終了するまでの間、担保を立てさせて、又は立てさせないで、特定調停の目的となった権利に関する民事執行の手続の停止を命ずることができます(特調法7条1項)。
調停委員会の決定調停委員会は、当事者の共同の申立てがあるときは、事件の解決のために適当な調停条項を定めることができます(特調法17条1項)。
調停条項が当事者事双方に告知されたときは、特定調停において当事者間に合意が成立したものとみなします(特調法17条6項)。
調停条項の内容に一定の経済合理性が求められる調停条項、民事調停法17条決定は、特定債務者の経済的再生に資するとの観点から、公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容のものでなければならなりません(特調法15条、17条2項、20条)。

2 特定調停手続の流れ

特定調停手続の流れは以下のとおりです。以下は重たい方の業の私的整理に関する特定調停を念頭においていますが、2つの方法は大きくはかわりません。日本弁護士連合会が公表している手続は期日は2回を想定しており、より軽い手続となっています。
いずれにしても、申立にあたり、裁判所とすりあわせをしておくことが重要だと考えられます。

      時系列                         裁判所・調停委員の対応                             補足
申立て(特調法3条)申立ての受理。
倒産処理に精通した弁護士等を調停委員に選任(特調法8条)。
事業再建計画を調停委員に提示(特調法10条)
予納金は調停委員の負担の程度によります(事案によって異なる)。
調査嘱託弁護士・会計士の選定。
進行協議期日(又は第1回調停期日)債権者の意見聴取・調査事項の確定。
調査嘱託弁護士等に再建計画の調査を依頼。
第1回~第2回調停期日調査を嘱託した弁護士等の意見書提出、調停案を提示(特調法15条)。
各債権者の意見聴取
調停案の提示、必要に応じて調停条項の修正。
 
第3回調停期日債権者の同意・不同意の表明。  対象全債権者が同意すれば成立(特調法16条、民事調停法16条)。
一部の債権者が不同意の場合の対応17条決定(特調法22条、民事調停法17条)をすることが考えられます。 東京地決H16.10.25 17条決定により解決した事例
裁判例の詳細を見る
千葉県供給公社が、民間金融機関11行(債務額714億円)、住宅金融公庫(債務154億円)、千葉県(債務40億円)を相手方として特定調停を申立てたが、調停委員の調停案について、一部の債権者が反対したため、調停がまとまらなかった。そこで、裁判所は、調停委員の調停案について民事調停法17条決定をしたところ、異議申立てなく、確定したと報告されています
2週間以内に異議がなければ17条決定は確定(特調法22条、民事調停法18条3項)。異議が出ると決定は効力を失います(特調法22条、民事調停法18条2項)。その場合は民事再生手続等を検討せざるを得ません。