このページは、特別清算の税務について、簡単にまとめました。
特別清算の税務は、事業年度以外は、通常の状態と基本的に変更はありません。
債権者側の税務についても少し触れています。
1 清算会社の税務
⑴ まとめ
特別清算の税務は、事業年度以外は、通常の状態と基本的に変更はありません。
なお、債務免除益の発生時期との関係で、協定案ないし和解条項の定め方にには留意が必要となります。また、(期限切れ)繰越欠損金の利用、資産譲渡損の利用などを検討する必要があるケースもあります。
清算人が確定申告を怠ると、青色申告承認が取り消される可能性があります(法人税法127条1項4号)。この場合、欠損金の繰戻還付が受けられなくなる可能性がありますので注意が必要です。
⑵ 事業年度について
解散日(開始日ではありません!)をもって事業年度は一度終了します(法人税法14条19号)。「解散日」とは株主総会の特別決議によって解散が決議された日(会社法471条)となります。
破産の場合は、清算事業年度第1期は、解散日の翌日から従来の事業年度末までですが、特別清算の場合には解散日の翌日から1年間となります(会社法494条1項)。
事業年度と申告期限を整理すると、以下のとおりとなります。
時期 | 呼び方 | 原則的申告期限(法人税法74条) |
---|---|---|
事業年度開始日~解散日まで | 解散事業年度 | 原則として、解散日の翌日から2ヶ月以内。なお、会社解散の「異動届出書」を遅滞なく提出する必要があります。 |
解散日の翌日から1年 | 清算事業年度第1期 | 原則として、事業年度終了の翌日から2ヶ月以内(法人税法74条)。 |
事業年度開始日~事業年度末日 | 清算事業年度第X期 | 同上 |
事業年度開始日~残余財産確定日[2](法法14条1項21号) | 清算確定事業年度 | 残余財産確定日翌日から1ヶ月以内。「残余財産確定日」については、法文上は定義されていませんが、一般的には換価終了日とされています。特別清算終結決定日や協定案の認可決定日ではありません。 |
清算結了 | 結了の事実につき「異動届出書」を提出する必要があります。 |
2 債権者の税務
法人税基本通達9-6-1は、特別清算に係る協定の認可の決定があった場合において、この決定により切り捨てられることとなった部分の金額については、その事実の発生した日の属する事業年度において貸倒れとして損金の額に算入するとしています。
通達の詳細は以下リンク先の国税庁ホームページから、法令等→法令解釈通達→法人税関係→基本通達法人税→第9章第6節第1款にあります。
個別和解については、損金算入を否定した裁判例もあるので注意が必要です(東京高判H29.7.26)。
東京高判H29.7.26:特別清算をした子会社に対する債権放棄の損金算入を認めないとした裁判例
Xが、X人の子会社A及びBに対する貸付金債権につき、A及びBが申し立てた特別清算手続において、同裁判所の許可を得て、和解契約により放棄をしたところ、課税当局から債権放棄は寄附金に該当するとして更正処分を受けたため、取消しを求めて提訴しました。
本判決は「基本通達9-6-1(2)が、特別清算の手続における金銭債権の消滅事由について、『特別清算に係る協定の認可の決定があった場合』に限定して、当該決定により切り捨てられることとなった部分の金額につき、貸倒れとして損金の額に算入するものと定めており(このことは、同通達が「等」といった文言を用いていないことからも明らかである。)、特別清算協定認可の決定によらずに当事者間の合意で切り捨てられた部分の金額については損金算入を認める旨の文言が見当たらないことからすれば、特別清算手続において、裁判所の上記認可の決定によらずに個別和解等により切り捨てられることとなった部分の金額については、上記の場合に該当しないものとして、基本通達9-6-1(2)の適用を受けないものと解するのが相当である。」として、また「本件債権放棄は、当時の状況の下で経済的合理性の観点から特段の必要性があったとは認め難く、基本通達9-4-1にいうやむを得ずこれをするに至ったなどの相当な理由があったとはいえないから、これにより消滅した本件貸付金等債権の債権額は、客観的にみて法人の収益を生み出すのに必要な費用又は法人がより大きな損失を被ることを避けるために必要な費用(費用としての性質が明白であり明確に区別し得るもの)に当たるとはいえず、寄附金に該当しないものとして損金算入を認めることはできないというべきである。」などと説示して、損金算入を認めませんでした。