いわゆる私的整理手続きにおける、債務免除等の要請行為は、「支払停止」にあたるか
今回は、やや専門的な内容についてです。
民事再生や会社更生などの法的整理に対立する概念として、私的整理という概念があります。法的整理が裁判所の関与(監督)もと、債権カットをするに対し、私的整理は、裁判所が関与しない状況で、金融債権のみの債権カットやリスケをすることを指すものです(私的整理は、明確に定義が定められているものではないため、対象債権者などは、ケースバイケースです)。
最近では、法的整理をしてしまうと事業が著しく毀損してしまうため、私的整理を中心に処理がされています。
私的整理を進める場合、金融機関に、債権元本の支払いを止めること、リスケすること又は債務免除を要請する旨の通知を行うことになります。これが、破産法、民事再生法あるいは銀行取引約定書などの「支払停止」にあたるかが問題となることが時々あります。該当すれば。、銀行は預金の払い戻しを拒否できます。また、その後に偏波弁済を受けた場合、否認(事後的に効力が否定されること)される可能性が出てきます。
いくつか裁判例があり、否定したものとして東京地決H23.8.15、東京地決H23.11.25、肯定したものとして大阪地判H29.3.22があります。
いずれも地裁の判断であり、学者の意見も色々分かれているところです。上記裁判例は、いずれも状況を分析して結論を導き出しているように考えます。
軽々には申し上げられませんが、個人的には、リスケのみの要請であれば「支払停止」には当たらない、債務免除まで含まれた要請であれば、その時点で債務超過であり債務免除が確実な状況であれば「支払停止」に当たるが、債務免除が確実とまでは言えない場合は当たらないというところかと考えております。
債務免除やリスケを依頼するという、切迫した状況で、難しい判断が求められる中、このように解釈が定まっていないのは、弁護士泣かせといえます。
このあたりが。法律の面白いところでもあり、難しいところです。