せっかく担保を設定したのに、倒産時に主張できない①!?
せっかく担保を設定したのに、取引先が倒産した際に担保権を主張できないということがあります。倒産した時こそ、担保権の効力が認められるべきであるのですが、何故このようなことが起きてしまうのでしょうか。
それは、対抗要件を備えていない時におこります。
典型的には、抵当権設定契約があったとしても登記がない時です。なお、仮登記でも担保権を主張できるか否かは、主張できるという説と、できないという説で分かれています。
では、登記や登録などの対抗要件さえあれば、常に認めらるかというと、そういうことでもありません。
この点で、よく問題になるのが、自動車に対する所有権留保です。所有権留保というのは、典型的には、売買で、代金全額の支払いがなされるまで売主に所有権を留保することで、買主の支払債務を事実上担保するものです。自動車では、自動車を売るのは、販売会社(いわゆるディーラー)になるのですが、信販会社が販売会社に代金の立替払いをして、事実上信販会社がローンをつけている形をとります。仮に買主が代金の支払いをしない場合は、信販会社が留保していた自動車に対する所有権を行使(実際には売却)して、回収することになります。
自動車の登録上の名義は販売会社になっている状態で、信販会社が弁済した後、買主が民事再生した場合、信販会社の名義で登録していない以上、信販会社は担保権を主張できないとした判例があります(最高裁判例H22.6.4)。
なんで?と思われますが(私も思いました)、簡単には、担保権者の名義となっていないため、担保権者はせっかく設定した担保が主張できないとされてしまったのです。
では、どうすればいいのか。次回に続きます。