私的整理中の権利行使について(東京地裁H30.2.13)

私的整理は、対象となる債権者全員の合意がなければ成立しません。

そこが私的整理の難しいところです。

ところで、私的整理中に、個別に権利行使をすることは許されるでしょうか?

基本的には許されると考えられています。但し、公序良俗に反しないこと、権利濫用にならないことといった制限はかかります。

特に、権利濫用になるかどうかは、争われることが多いです。

例えば、東京地判H10.10.29は、債権者の個別の権利行使を権利濫用として否定しました。やや特殊な事例かもしれませんが、弁護士が関与して、かなり私的整理を進めた状態だったことから、救済的な判断になったものと考えられます。

一方で、東京地裁H30.2.13は、私的整理中における債権回収のための訴訟提起は、権利の濫用とは言えないとしました。具体的には「私的整理は、関係者間の合意に基づいて行われるものであり、私的整理に加わって債権の満足を得るか、私的整理を加わらずに債権の満足を得るかは、債権者が自由に選択できるのであって、いったん私的整理に加わっておきながら後になって(配当額に不満があるなどの事情から)私的整理の枠外で債権の満足を得るような場合は別論として、原則として、私的整理に加わらずに債権者が満足を得るために債務者に対し訴訟を提起することが、権利の濫用であると評価されるものではない。」と判示しました。

こちらは、私的整理が進んでいるという背景もなく、非常にシンプルに判断をしました。個人的にはこちらの判断のほうが、しっくりきます。

このあたりが、法律の面白いところでもあり難しいところです!

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